219 水族館を二人きりで‥‥
世間でも長期休みの真っ最中ということもあり、大勢の人が水族館を訪れていて、正直その場にいるだけで疲れてきそうだ。
‥‥由南ちゃん、こういうのが嫌で来なかったっていうのもあるのかもしれない。
でも、久々に水族館に来てみると、何だかこの薄暗さが懐かしいように感じるね‥‥。
由南ちゃん、停電した時に行ったって言ってたけど、これ以上暗くなったら床見えないんじゃないだろうか?
「クラゲ綺麗だね」
「そうだね~」
まぁ、これってライトアップが綺麗だからって‥‥‥‥いや、これ以上は言わないでおこう、何だか現実的になると楽しめないような気がする‥‥。
でも今、結構テンションが上がっている。
魚を見ると高ぶるこの気持ちは何なんだろう!
「コイ?」
「え!?」
「ほら、これハナゴイって言うコイなんだって。 凄く綺麗だね‥‥」
いきなり信くんに話かけれられたから、ビックリして、心臓が飛び出そうだったよ‥‥。
それにしても、信くんも楽しそうだなぁ。
元々、女の人って言ってたけど、前世でも信くんはこういうのは好きだったのかな‥‥?
でも、何だか綺麗な目をしてる‥‥。
うん‥‥やっぱり祈実さんみたいだ‥‥‥‥って今はそういうのはいいんだって!
「可愛いね。 あと、珍しい魚を見ると凄く気持ちが高ぶってくるし」
「そうだね。 でも何だか奈留さんと二人で見てるって不思議な気分だな‥‥」
ふ、不思議? それって良い意味で?
それとも‥‥。
「もしかして、嫌だった?」
「ううん、楽しいよ? それに何だか今日の奈留さんいつもと違って、大人しいから何だか雰囲気が違っていてさ‥‥」
緊張しているからたぶんおとなしく見えるんだと思うけど、普段もそんなに騒いでるつもりはないんだけどな‥‥。
「そ、そんなにいつもうるさいかな?」
「違うよ。 いつもは明るくて元気でとても良いと思うよ。 だけど今日は何だかあの人に似て‥‥‥‥ううん、なんでもない。 ただ、良いなって思ったんだよ」
そ、そうかなぁ?
確かにいつもよりは話してはいないとは思うが‥‥。
「魚を見入っちゃって、口数が少ないっていうのはあるのかも?」
それと、緊張とね。
「でも、普段と違う奈留さんを見れて、何だか嬉しいよ。 灘実さんに感謝しないとなぁ」
そう言っていただけると私も嬉しいというか‥‥。
でも、由南ちゃんにはそこまで感謝はしなくていいと思います!
いや、ちゃんとお礼はするけどね!
「そ、そうだね‥‥‥‥あ、あっちは大きい水槽みたいだよ? 行ってみようよ」
思った以上に照れて、強引に話を変えようと私は通路の先にある大きな水槽を指差した。
でも人が周りに、大勢いて少し後悔したが‥‥。
「少し混んでるみたいだし、もう少し通路の水槽を見てから行こうか?」
「そ、そうしよっか」
こうして、私はまた近くにいる綺麗なお魚に目を向けるのだった。
何だかこの水槽のお魚‥‥安心する‥‥‥‥。