218 複雑な感情
由南ちゃん‥‥‥‥流石に二人はないよ‥‥。
いや、信くんが嫌いとかそういうことは全くないんだよ?
ないんだけど、最近なんだか信くんといると、緊張するっていうか‥‥。
信くんが転校してきてすぐの時に二人きりになってたじゃないかと言われそうだが、あの時とはなんだか色々違ってきているような気がする。
‥‥‥‥だって、姉弟だからか、信くんって前世の祈実さんに似てるっていうか。
いや、それ以前に私はこういう優しい人が好きなのかもしれない‥‥‥‥いや! 友達としてね!
はぁ、でも二人きりで遊ぶって、信くんに言いづらいなぁ‥‥。
‥‥はっ! もし断られたらどうしよう。
こ、怖いけど、このまま話さないと‥‥。
「灘実さん、どうだった? ‥‥奈留さん?」
「ふぇっ!? あ、うん。 来られないって」
来られないっていうか、たぶん来るつもりがなかったんだろうけど。
「そうなんだ‥‥他の人は?」
「え!? えーと‥‥‥‥こ、来られないって」
来られないっていうか、たぶん誘うつもりがなかったんだろうけど‥‥‥‥ていうか、なんで私こんなに誤魔化してるの!?
で、でも私が仕組んだみたいに思われたらたぶん恥ずかしすぎて死んでしまいますので、これでいいと思う。
「そっか‥‥じゃあ二人で行こっか!」
‥‥え、そんなあっさり?
てっきり、行かないっていう案がでるんじゃないかと思ったんだけど。
ま、まぁ、水族館に行きたかったし、信くんとも遊びたかったからよかった‥‥のかな?
「う、うん。 それじゃあ、行こー!」
でも、絶対後日、由南ちゃんに文句を言おうと心に誓いながら、私は信くんと水族館に向かった。
◇◆◇◆◇◆
「こうなるって思って、先に入場券渡してたのか‥‥」
「どうしたの?」
「あ、ううん、なんでもないよ。 あはは‥‥」
入場券貰って、断るなんて普通はできないし、こんなこと考えるなんて、由南ちゃんらしいというか‥‥。
何だかいつもと違うとは思ってたんだよね、由南ちゃんから進んで外に出ようなんて言わないもん。
「でも、奈留さんと二人きりで遊ぶなんて、尾行のときを合わせると二回目だよね」
「そうだね、あの時は尾行という名目だったけど、最終的には遊んでたもんね」
あの時は見失っちゃったから仕方がなかったんだけど‥‥。
「でも、楽しかったよね。 まだお互いの距離感がわからなかったのに。 だけど今は前よりもっと友達だから、今日はきっと凄く楽しくなると思うよ♪」
「信くん‥‥そうだね!」
結果的には由南ちゃんには感謝しないといけないかもね。
入場券も貰ったし‥‥。
でも、騙してきたり‥‥凄く複雑な気分‥‥。