20 図書館
突然だが、私は図書館好きだ。
静かで落ち着けるし、勉強だってそこでできる。
なんて万能空間なんだ、図書館!
前世では暇さえあれば来ていた。
とはいえ、前世ではとてもお世話になった図書館なのだが、今世ではあまり行く機会はない。
前世の妹がいないからである。
避難所として行くことが多かったが、今は家の方が楽しいから行く機会が少なくなってしまった。
それでもたまに行くことはある。
別になにか理由があるわけではないが、ふと懐かしんで足を運ぶ。
「とはいっても別にすることはないんだけどねぇ」
勉強も前世で大方出来るところまでやってしまったし、本だって面白そうなものは前世でもう既に大量に読んだ。
けどまぁ暇潰しには丁度いいだろうと来てみたのだが、運が良いのか悪いのか、今日の休日の図書館には知り合いがいた。
「夕闇じゃないか」
呼ばれた方に振り向くとそこには部活の先輩で、あり女子ソフトテニス部部長の、河鳴藍先輩がそこにいた。
「藍先輩!?」
とても驚いた。
絶対にこんな場所では会わないと思ってた人がいたのだから。
藍先輩はダルい、面倒くさい、そのもののような人だ。
こんな図書館にくるわけない。
「なんだその幽霊でも見たような顔は。 なにか言いたいことでもあるの?」
「い、いやその言っても怒らないですか?」
普段、ダラっとしている藍先輩は、怒らないように見えて、結構怒る。
なので一応確認を‥‥。
「あぁ、言ってみ?」
どっちともとれる言い回し‥‥。
「藍先輩みたいな、本なんてゴミだと思ってそうな人が図書館にくるとは意外です!」
「よし、夕闇。 次の部活はどうなっても知らないから」
「すいません!!」
あぁ、これは嘘をつく場面だったんですね。
誰かこの人の攻略本作っておいてください!
「まぁ間違ってはいないな」
「じゃあなんで怒ったんですか!?」
理不尽過ぎやしないか!
「言い回しがムカついただけ。 それより夕闇も本探すの手伝ってくれないか? 私一人は面‥‥大変だから」
面倒っていいかけたなこの人‥‥。
「え? 藍先輩、本読むんですか?」
「私は読まない。 今、家に従姉弟が来ていてね。 二人とも本が好きだから」
「藍先輩優しいですね」
見直しましたよ藍先輩。
従姉弟達のために進んで動くなんて。
「母に行ってこいと言われた。 本当に面倒くさい」
ダメだこの人、平常運転だ‥‥。
「でも、その従姉弟さんに、図書館に来てもらったほうがよくないですか?」
逆じゃないですか?
「いや、今、従姉弟達は母の料理を手伝ってる」
なんで、先輩手伝ってないんですか!
その従姉弟のポジション、完全に先輩がするべきですよね!?
「先輩、そこは先輩がやるべきなんじゃ?」
「私は料理が絶望的に下手でな、まぁなんだ‥‥色々ダメにするから私はキッチンには入らないようにしている」
「何かすいません」
「謝ることはない、私だって料理みたいな面倒なことしたくない」
「謝り損です!」
本当この人面倒くさがりだな。
「まぁそれで、リビングでゴロゴロしてたら、母に行ってこいと言われたわけだ」
まぁそれなら仕方がない。
「当然ですね。 まぁ本探しましょう、先輩」