212 家の中にいたのは‥‥
自分より年上の人に話してみると、何だかスッキリするというか、私は気持ちよくカフェを出た。
「好きな人が出来たら、またその時、聞かせてね~」
店から出ようとしたときに、後ろから蓮佳さんがそう叫んでいたけど、たぶんそんな日は中々来ないだろうなぁ。
帰り道に、少し買い物をして、家に帰ると、知らない靴が玄関にあった。
あれ? 広葉じゃないし‥‥というか、女の人っぽいような靴‥‥。
‥‥え、女の人!? 家には兄さんしかいなかったということは、今この靴の人と二人きり!?
小乃羽ちゃんと別れて寂しいからって、女性を家に呼んでるとかじゃないよね!
いや、でも‥‥‥‥ここはきっちりと注意しておかなければ!
「兄さん、私はそんなの許しませんよ!」
「うおっ! 奈留? 帰ってきていきなりどうした!?」
勢いよく、リビングのドアを開けると、そこには‥‥‥‥。
「おじゃましてるぞ」
詩唖先生がいた‥‥‥‥え? 詩唖先生?
◇◆◇◆◇◆
広葉じゃないって言ったけど、詩唖先生の方の広葉だったんだね‥‥。
いや~家にいるはずのない人だから、普通は想像できないよね。
あと、広葉だってわかっていても兄さんの隣にいるとこが凄い違和感がある‥‥。
でも、後で疑ってしまった兄さんにしっかり謝っておかないと。
ちょっとでもその可能性があるんじゃないかと疑った自分が恥ずかしい!
「まぁ、家庭訪問みたいなものだな。 そんなに固い話はするつもりはないがな」
そういうことか、いやなんで来たんだろうと思ったよ。
「それにしては、兄さんとゲームしてませんでした?」
帰ってきてドアを開けたとき、何故かこの二人、並んでゲームをしていた。
いや確かに、兄さんと広葉といえばこの並びだけど、広葉あんた今、詩唖先生だからね!
「いや~何故か先生なんだけど、初めて一緒にゲームしたとは思えないくらいでな」
当然ですよ、広葉だもの。
「今やってたゲームは久々で、つい盛り上がってしまった」
「あれ? 一応新作のはずなんですが‥‥」
もう! 盛り上がりすぎで、ボロが出始めてるじゃないですか!
「あ、私、詩唖先生と二人で話してくるから、兄さんはゆっくりしてて!」
ふぅ、これで一段落‥‥‥‥。
「え? でも一応、家庭訪問なら、俺も聞きたいんだが‥‥」
え!? えっと、あの‥‥どうしよ!?
「夕闇兄、まずは夕闇に報告しないといけないことがあるので二人で話すから、大切なことは後で三人で話そう」
広葉が、こちらを向いて、上手く誤魔化せたろ? みたいな顔してるけど、元はといえば広葉が悪いからね!
「そうですか」
こうして、私達二人は客間に行くことにした。