210 久々にお邪魔してみると
旅行から、二週間くらいの時間が経ち、時間と共に、小乃羽ちゃんとの別れも大分悲しみが少なくなってきた。
あれから兄さんが逆に元気で、私にちょっかいをかけてくるので、そういう考える時間が少なくなったとも言えるかもしれない。
毎年、長期休みは、特定の人以外は、家に来ないので、基本私達二人しかいない。
まぁ、だから兄さんからのスキンシップは慣れてるんだけど、それにしても多いから困る‥‥。
まぁ、小乃羽ちゃんと別れてまだ日にちは浅いので中々強くは言えないんだよね。
でも、たまには外に出たいときもあるので、今日はなんとなく、職業体験でお世話になったマスターと蓮佳さんのカフェに一人で来ていた。
なんだか、落ち着くんだよねぇここって。
「まぁ、それで、兄さん別れちゃったんですけど‥‥」
「へぇ、お兄さんが別れちゃったんだね。 まぁ、学生の時のお付き合いなんて、遊びみたいなものよ?」
何だろう、今日の蓮佳さんは妙に大人っぽい。
前はもっと子供っぽいというかなんというか‥‥。
すると、後ろからマスターがコーヒーを入れてテーブルに持ってきてくれた。
「お前、何、格好つけてるんだよ。 今さら大人っぽく言っても夕闇もうお前の普段知ってるんだから無意味だろ」
あ、マスターも話聞いてたんですね。
というか、格好つけてたんですね蓮佳さん‥‥。
「もう、隆! そういうことは言わなくていいの! 今からでも奈留ちゃんが、私を大人の女性として尊敬してくれるように、頑張ってるんだから! 昨日来ることを知って、寝る間も惜しんで計画を立てたんだよ!」
蓮佳さん、それ本人を前にして言っちゃいけないと思いますよ?
いや、見た目は大人っぽいですよ? うん、見た目は。
「だから、今日起きるのいつもより遅かったのか! 本当にお前は‥‥。 というか、さっきの話、俺たち高校から付き合ってたんだから説得力なさすぎるだろ‥‥」
「あぐっ! 言い返せない‥‥‥‥」
何だろう、ここまでくると蓮佳さんが可哀想になってくるな‥‥。
いや、本当に可哀想なのは仕事ほとんど押し付けられているマスターなんだけど。
いじいじしている蓮佳さんを余所に、マスターは私に語りかける。
「それはそうと兄が別れたのか?」
「えぇ‥‥あれ? マスターって兄さんと会ったことありましたっけ?」
「何度かな。 でも、そうか別れたのか‥‥運命の出会いがあるように別れもあるってことだな」
運命か‥‥。
「じゃあ私達は運命の出会いだけでゴールインしたんだね♪」
「はぁ、俺の運命バグってるわ‥‥」
「またまた~照れちゃって~」
うん、確かにこの二人は、するべくして結婚したって感じだよね。
「まぁ、夕闇。 見てわかる通り、付き合う人間はちゃんと選べよ?」
「は、はい‥‥」
見てわかる通りというのは、まぁひとまず置いておいて、私もそんな付き合ったりとかあるのかなぁ。




