208 二人の気持ち
私は、暗くなりかけていたのだが、由南ちゃん達のことを思い出し、ギリギリのところで、ぐっと堪えた。
私が落ち込んだって仕方ない!
今は兄さんの話をちゃんと聞こう。
別れた。 兄さんはそう言った。
だけど、兄さんは昨日とは違って表情は暗くない‥‥。
やけくそってわけでも、ないような気がする。
「でも、それにしては落ち込んでないよね?」
「あぁ。 何だか納得できたって感じなんだ。 一応は、ってとこだけどな」
昨日はあれだけ納得出来てないって言ってたから、それなら良かったが、どうやって納得したのだろう‥‥。
「納得できたのはどうして?」
「まぁ、もう一度、小乃羽ちゃんと会ってみて、改めて考えてみたんだ。 自分が小乃羽ちゃんの立場なら、俺だってそうするかもしれないってな」
「まぁ、確かに兄さんならそうするかもだけどさ‥‥」
兄さん、そういうところ気を使っちゃうからね‥‥。
でも、それだと現状は変わってないよね?
他に何かあったのではないかと、私は思った。
「あとは、何年先でもいいから、会おうって言ったから‥‥かな」
あ、兄さんそんなことを。
小乃羽ちゃんが海外に行くのは止められないかもしれないけど、また会う約束をしたのはいいことだと思う。
「うん、良いと思うよ‥‥」
「まぁ、あれ以上困らせるわけにもいかなかったから、そんな約束くらいしか出来なかったよ」
そんなって‥‥兄さんは頑張ったと思うよ。
「頑張ったと思うよ、兄さん」
「‥‥でもな、奈留。 俺は諦めの悪い男でな、一度好きだと思うと中々離れるのは大変なんだ」
「ま、まぁ確かに‥‥」
凄く、離れてくれませんもんね‥‥。
「また、会えたら、今度は俺から告白するさ!」
「なんだか、兄さんらしいね」
好きになったら、その人のことを思い続ける‥‥。
うん、夕闇陸という人間はこうでなくっちゃね。
◇◆◇◆◇◆
私は旅行から帰ってきたということもあり、疲れていたので、ベッドに勢いよく倒れこんだ。
仰向けになり、なんとなく携帯を見ると、小乃羽ちゃんからメールが来ているのを見て、飛び起きた。
「小乃羽ちゃん‥‥」
私は内容が気になり、すぐにメールの中身を開いた。
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御姉様へ。
御姉様、まずは先に謝らせてください。
お兄様からお聞きになったとは思いますが、引っ越しのことをお伝えせず、隠していたこと、本当に申し訳ございませんでした。
御姉様には、まず伝えようと思っていたのですが、御姉様の生き生きとした顔を見て、どうしても言い出せませんでした。
御姉様が嫌いだとかそういうことではなく、引っ越しのことを言うことで大好きな御姉様が悲しまれるのが嫌だったんです。
それともうひとつ謝らなければいけないことがあります。
‥‥お兄様とのことです。
あれだけ見守っていてくださったのに‥‥申し訳ありません。
お兄様にも、謝っても謝り足りないくらいです。
でも、御姉様同様、お兄様も優しいですから、私と付き合うより、きっともっと幸せになれると思います。
御姉様、今まで本当にありがとうございました。
ごめんなさい
小乃羽
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