207 帰ってきた家で
「‥‥る‥‥奈留? 奈留!」
「‥‥ん? 由南ちゃん、どうかしたの?」
由南ちゃんに呼ばれて、起きた私は‥‥‥‥え、起きた?
私、いつ寝たんだろう‥‥。
「どうかしたじゃなくて、もう着いてるわよ」
「え? 本当だ!」
窓の外を見ると、初日の私達が集合してバスで出発したところに着いていた。
いつの間にかバスも止まっていた。
「降りないと!」
私は急いで、座席から立ち上がった。
あれ、でもまだ隣からから声のような‥‥。
「その前に、蔭道さん起こすの手伝ってくれない?」
「あ、蕾ちゃんまだ寝てるの!?」
あ、本当だ。 寝てる‥‥。
手伝ってってことは揺すっても起きないってことかな?
まぁ、疲れてるのかもしれないけど、もうついてるからね。
「起きないのよね‥‥あと、森田さんも。 まぁ、そっちは磨北姉弟に任せてるけど」
後ろを見ると、広葉を必死で起こす、信くんと祈実さんが。
まぁ、兄さんいなかったから、バスの中で暇だったんだろうなぁ。
「じゃあ急いで起こさないと運転手さんに迷惑になるし、早く起こそっか!」
何だか最後になるにつれて、皆気が緩んで、ぐたぐたになっていったような気がするが、まぁこれも少し時間が経てば、良い旅行の思い出になるよね。
こうして、私達の二泊三日の旅行は終わりを告げた。
◇◆◇◆◇◆
信くんと祈実さん、あと広葉は、別の方向なので別れた。
そのあと、蕾ちゃんのマンションの近くまで来た。
「ふぁ~、じゃあお疲れっす~」
「お疲れ様~」
あくびをしながら、トボトボと歩いていく蕾ちゃんを見送り、由南ちゃんと二人きりに。
「‥‥長いようで短かったわね。 旅行」
「そうだね。 結構色々やったのに、まだ物足りないなんて思っちゃってるからね」
少し、不完全燃焼って感じがするかな‥‥まぁ、温泉は充分入ったが‥‥。
今度行くなら、海とかもう一回行きたいな。
「物足りなかったわね‥‥マッサージチェア‥‥」
「‥‥ん? え、別にそんな話してなかったはずだけど!? というか、マッサージチェアなんかあったっけ?」
私知らない‥‥。
「あったわよ。 蔭道さんとずっとやってたもの」
「‥‥兄さんの話で仲間外れとか言ってたけど、完全にそれ私が仲間外れじゃん!」
「あ、私道こっちだから。 バイバイ」
「由南ちゃん───!」
たぶん、最後まで暗くならないようにって気遣いだと思うけど‥‥あんまり嬉しくない!
◇◆◇◆◇◆
玄関の扉を開けると、リビングの電気が付いているのが見える。
兄さんがいるのはわかるけど、何だかこういうときってあまり良いときじゃないような気がするんだけど‥‥。
恐る恐る、リビングの扉を開けると、そこには何時もの兄さんが何だかスッキリした表情でいた。
「おかえり、奈留」
「た‥‥ただいま、兄さん‥‥‥‥それで、どうだったの?」
昨日の暗い表情じゃなくなっているので、私は少し期待をして兄さんに聞いた。
「別れたよ」
兄さんのことだけど、私は何だか、どん底に突き落とされたような気分になった。




