19 あれ?
部活が終わり、由南ちゃんと途中まで一緒に帰っていた。
帰り道は、人通りもあり、明るいのでそこまで危なくはないのだが、兄さんは心配みたいで、出来るだけ誰かと一緒に帰るように言ってくる。
私も途中までだが、由南ちゃんと帰るとは楽しいので、なにも問題はないのだけど。
「小乃羽ちゃんがね、最近私にサーブの上手い打ち方を教えてくれるんだ♪」
「立場逆でしょそれ」
「経験者なんだから逆じゃないよ。 正常だよ?」
上手い人に教えを請うのは当たり前だよ。
年上だから、なんて威張ってたって仕方がないもんね。
「まぁ別にいいんだけどさ、私こっちだから、そろそろ‥」
「うん、バイバイ♪ また明日ね!」
「また明日」
私は由南ちゃんが見えなくなるまで手を振り続け、なんだか子供っぽいなと我に帰った。
やらなければよかった‥‥。
少し、顔を赤くしながら、家に向かって帰ろうとした時、遠くの方に広葉がいることに気が付いた。
いつも兄さんと一緒にいるイメージがある広葉だけど、離れているとこもあるんだなぁ。
あれ? でももう一人誰かいるような‥‥?
‥‥‥‥女の人!?
広葉が女の人と二人でいる‥‥。
◆◇◆◇◆◇
広葉が女の人といるとこなんて、前世でもなかったからとても驚いたが、どういう関係なんだろ。
まさか彼女か!
気になる‥‥‥‥女の人の顔が。
広葉ってことが、なんとなくわかるだけで、遠すぎて顔がよくわからない。
それは女性も同じで全く見えない!
もう少し近づいてみたらわかるだろうけど、どうしようかな、よし行こう。
即決で決まった。
近づいていくと段々見慣れた広葉の顔がハッキリしていく。
いや別に広葉の顔を見たいわけではないのだが‥‥。
よし! 女の人も結構見えてきたな!
ん? 何か見たことあるなあの人‥‥。
‥‥夏雪先生!?
なんで? なんで担任と広葉が一緒にいるんだろう‥‥。
そりゃ、何か接点がないと話さないだろうけど。
‥‥どんな会話をしてるかちょっと気になってきた。
もっと近づいて確かめてやる!
そう思い近づこうとしたのだが、もう会話が終わったのか、二人とも別々の道を歩いて行ってしまった。
あと少しだったのに‥‥。
ていうか、広葉がこっちに歩いてきた!
私は隠れなくてもいいはずなのに隠れる場所を探し隠れてしまった。
ふぅ、なんだか良くないものを見てしまった気分になった。
「奈留ちゃん何してるの?」
速攻ばれてしまった!?
「い、いや‥‥偶然ですね。 こんにちは森田さん」
「まぁもうこんばんはの時間になりそうだけどね」
そろそろ暗くなるだろうしね。
それはそうと会ってしまったからには、さっきことを聞くべきなのか‥‥。
気になるしなぁ。
「さっき誰かと一緒にいませんでした?」
「ん? あぁ見てたんだ。 夏雪先生だよ。 今は奈留ちゃんの担任の」
やっぱりそうなんだ。
「でも先生とどうして?」
「俺が中学の時、色々お世話になったし。 偶然会ったからお礼と世間話だよ」
今の先生からは想像できないけど、前世の中学時代はいい先生だったからね。
でも、広葉がそんなお礼を言うほどとは思わなかったが。
「へぇ、そうなんですか」
「彼女とかだと思った? 嫉妬した? ね? ね?」
「してませんよ。 気になっただけです」
一瞬、広葉が遠くにいってしまったような気がしたが、すぐ元のアホ顔に戻ったので少し安心した。
「気になってくれただけでも俺は嬉しいよ~♪」
「あぁもう! 本当に森田さんはいつも通りですね!!」
結局いつも通りのウザさでした。




