198 電話が
たくさん遊ぶぞ~、とさっきまで思っていたのだが、少し遊んだ今は少しこのゆっくりした時間を楽しもうと思い、ビーチマットを敷いて、そこで兄さんと、のんびりしていた。
「こうやってなにもしないもの、趣があっていいな、奈留」
「ちょっとそれは大人っぽすぎるような気もするけどね。 でも、ぼーっとしてるだけっていうのは私も好きかな‥‥」
景色は綺麗だし、太陽の光は気持ちがいいし、それをゆっくり感じるというのもいいかもしれない。
「いつもは思わないけど、こういう風に見ると二人って似てるなぁって思うね」
まぁ、元が一緒だからね。
環境は違っても感じるものは同じということでね。
「兄妹なんだから、似てても不思議じゃないだろ」
「普段が違いすぎるからだよ!」
「そこまでは違わねぇだろ」
いや、当人である私が言うのもなんですが、回りから見ると大分違うように見えると思うよ。
私だから一緒だ、ってわかるけど。
「ほとんど違うからね。 今だってきっと心のなかは思ってることはちがうのかもなぁ~って」
「思ってることと、違う?」
「奈留ちゃんの場合は景色綺麗でもう少しゆっくり見てたいなぁって顔してたけど、陸はきっと面倒だから動きたくないっていう顔してたし!」
せっかくの旅行で、面倒とかあるのか?
「いやいや、それはさすがに‥‥」
「流石は俺の長年の親友だな。 ほぼ正解だ」
当たっちゃたー!
何だか少し台無しな気分だよ‥‥。
「はぁ、兄さんらしいといえば、らしいのかなぁ‥‥」
「何か当たってもあまり嬉しくない‥‥。 あ、俺ちょっと飲み物買ってくるよ」
「いってらっしゃい」
広葉が離れ、ビーチマットの周辺にも誰もいなくなり、私達兄妹二人になった。
「いやでもな、奈留。 この風景もちゃんと見てたんだぞ? ‥‥‥‥ん?」
私に言い訳を始めようとした途中で、いきなり兄さんの携帯が鳴り出した。
兄さんは携帯をとり、電話に出る。
「もしもし‥‥‥‥うん、もういいの? ‥‥え? あ、うんわかった待ってる。 それじゃあ」
凄く短い時間で情報も少ないが私は電話の相手がなんとなく見当がついた。
「兄さん、さっきのって小乃羽ちゃん?」
もしかしたら来ないんじゃないかなぁ、と少し思っていたからね。
「あぁ、用事が終わったそうだ」
でも、こんなにかかるって、やっぱりちゃんとした用事があったんだね。
なんだか、無理に誘っちゃって、申し訳ないな‥‥。
小乃羽ちゃんが来たら、ちゃんとお礼を言わないとね。
「じゃあもうすぐくる?」
「あぁ、あと何時間後かに来るらしい。 まぁ気長に待とうか」
「そうだね」
私は表向きは落ち着いていたが、心の中では凄く喜んでいた。
小乃羽ちゃん、早く来ないかなぁ‥‥。