197 するか、しないか
祈実さんが持ってきたものはどれも面白そうなものが多かった。
皆一緒に遊べるボールや、スイカ割りでもするのか棒まで、いろんなものがあった。
「これいいんじゃないか? 結構デカイ水鉄砲。 あ、水入ってる‥‥よっと!」
「ブッ! 陸やめっ、顔はやめて、顔は!」
兄さん、水鉄砲、上手いなぁ。 的確に当てていってる。
広葉も広葉で毎度毎度やられているはずなのに、全く避ける動作なかったけど‥‥。
「祈実、これ綺麗な水?」
「うん、そうだよ」
あ、海水だと思ったらそうじゃないんだ。
「なら大丈夫だな」
「いや! そういう問題じゃ、ゴボゴボ!」
綺麗な水でもダメだからね! あと聞く前から打ってたし!
「駄目ですよ、兄さん。 これは没収です!」
「楽しいんだがな‥‥」
兄さんは楽しいかもしれないけどさ。
「ふぅ、助かったよ奈留ちゃん‥‥」
広葉、海に入ってないのに、もうびしょびしょだね。
「まぁ、やりたい人はやるっていうことで、自由に遊ぶか?」
「そうだね。 もうすでに、蕾ちゃんが一人で砂で芸術作ってるからね」
広葉がこんなことになってるのに、なんの反応もないなぁ、と思ったら、一人で砂の建造物を作り上げでいた。
流石は天才というか、何だかさっきの数分では作れないだろというほどのものを作っている。
「まぁ、時間はいっぱいあるもんね。 じゃあ奈留ちゃん、背中に日焼け止め塗ってくれない? 一応塗ったんだけど、まだ塗り残しがあるかもだから」
「わ、私ですか!? いや、あの‥‥その‥‥」
私は回りに代われる人がいないか見回したが、蕾ちゃんも由南ちゃんも少し離れたところにいる。
「駄目?」
「いや、全然駄目じゃないです! 塗ります!」
これはもう覚悟を決めて私が塗るしかないよね。
罪悪感が大半を占めているけど、ちょっと嬉しいと感じている自分もいる。
ま、まぁ前世で、好きな人に触った経験なんてないわけで‥‥。
いくら今世では違うとはいえ、同じ人だしね。
「お願いね~」
うん、背中に日焼け止めを塗るだけなんだ。
でもなんか、今の感情、昨日の信くんの時と何か似てる。
今は緊張する必要なんてない、落ち着け‥‥落ち着け‥‥。
よし、決めた!
「由南ちゃーん! 手伝ってください!!」
もう、大声で由南ちゃんに助けを求めるしかないよね!
緊張しないとか無理!
「えぇ!? 私の背中、二人でするほど大きくないよ!?」
結果、私は緊張で固まってしまって、由南ちゃんが祈実さんの背中に日焼け止めを塗りました。
あぁ、こんなチャンスもうないかもしれないのに、残念だな‥‥。
ま、まぁ、この後も、再起不能になることを回避できてよかった‥‥かな?