2 これから
ちょっと頭のなかを整理する時間が欲しい。
この男の子は俺のことを奈留と。
そしてこの子は自分のことを俺の兄だとそう言った。
それに俺の昔の写真で見たことのある顔。
導きだされる答えは‥‥‥‥‥‥。
俺が俺の妹になった‥‥だと!!?
先ほどすぐに男女の違いを確認したので俺が女であることは確定したわけだ。
‥‥なんて複雑な気分なんだ。
もう妹と会わなくていいという嬉しさと、自分が妹になったという絶望で心が入り乱れている。
弟じゃダメだったんですか!?
自分を殺した妹に俺がなるというのは、複雑すぎるだろ。
兄? 兄は問題ないよ。 だって前世の俺な訳だし、むしろいいお兄ちゃんにあたったものだ。
それよりどうしよう。
喋れるようになったら、ボロを出さずにいれるだろうか?
いや、そもそも隠す必要あるのかな‥‥‥‥いやいや隠さないとダメだろ!
兄に向かって妹がいきなり──『俺、元々お前だったんだ』──って言ってくる。
‥‥パニックだわ! それにそんな妹、絶対嫌だし!
いやその妹、俺なんだけど。‥‥兄の立場だと普通にトラウマものだわ!!
よし何としてでも黙っていよう。
俺が考え事をしていて先ほどまで気付かなかったが、兄が赤ちゃんに使う音の鳴るおもちゃを振って、俺を笑わせようとしているようだ。
よし全力のスマイルをお見せしようではないか!!
ニパァー♪
「わぁっスッゴイ笑った! 可愛い!!」
兄は俺に笑顔で抱きついてきた。
うわーこの子供反応可愛いー!! ‥‥あ、前世の俺だった。
でもなんだろう、この笑顔‥‥守りたい‥‥!!
しかし昔の俺はこんな感じで妹と接してたこともあったのか‥‥。
暴力を振るわれるから、関わることを極力避けてたからなー。
前世だと考えられないね!!
◇◆◇◆◇◆
大体状況を確認したので、今後の方針を決めようと思う。
ダラダラ生きる!!‥‥ということも考えたのだか二回目の人生とはいえ、これも自分の人生だ。
それに世間体を気にしてしまう俺は、家族に対して罪悪感を感じてしまうだろう。
じゃあどうするか!!
決めた!! (前世の)俺は(今世の)俺に優しい妹になろう‥‥あれ?なんかどっちがどっちかわかんなくなってきた。
俺は兄に優しく、優秀な妹になろう──だ。
つまりは俺が理想とした妹に俺がなってやろうではないか!
なんか色々ダメな気がするが知ったことではない。
しかしだ、俺は家事スキルは基本的にマスターしてるし─(妹に全部やらされていたので)─勉強だって出来る方だ。
いやもう既に完璧‥‥つまりは‥‥俺が妹だったのか!!(?)
まぁ優秀なのは程々で、兄に優しくするのは絶対と位置付けをしておこう。
前世の妹よー。今からお兄ちゃんが完璧な妹になるからちゃんと学びなさい。ノートもきちんととるように。
そしたらお兄ちゃんもお前のことを許す‥‥ことは絶対ない!!絶対だ!!
それとあと一つ決めたことがある。
俺がモテモテになるように生きよう‥‥あれ?またなにか違うな。
今世の俺、つまりは兄がモテるように妹として精一杯応援しようではないか。
え?そんなことして何の得があるのかって?
バッカお前そんなの決まってる。
言ってしまえば少し前まで兄は俺だった訳だ。
それがモテる──つまり俺がモテるのと同義ではないか?違うか?違うかも。
まーつまりはあれだ、余りモテたことがなかったから、別の俺にそれを完遂してもらいたい。
兄がモテるのを見て自分もうれしい‥‥色んな意味で。
あー色々考えてたら眠くなってきた。
そして俺は遠くない未来にくる出来事を想像しながらまた少し寝ることにした。