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189 大切だからこそ

 私は逃げ出した後、我に帰り、さっきの行動を酷く後悔していた。


「はぁ‥‥やってしまった‥‥」


 助けてくれたのにあの態度はないよね‥‥!

 支えてくれなかったら、危なかったかもしれないわけで、それをとっさに助けてくれた命の恩人と言うべきであろう人に‥‥。


 それで、私は後悔と反省で、着替えた後、男子更衣室出入口の前を行ったり来たりしていた。

 あー、絶対に嫌な気持ちになってるよね‥‥どうしよう、せっかく同じ境遇で仲良くなれた人なのに‥‥。


 しんくんには嫌われたくないな‥‥。

 転生してから自分の力で仲良くなり、悩みを言い合えるくらいになった男の子なのに。


 何でだろう、嫌われると思ったら、凄く心が痛い‥‥。

 今までも、辛いとか悲しいとか色々あったはずなのに、今までとは全然違う痛みだ‥‥。

 でも、なんでこんなに苦しいのか、私にはわからないよ‥‥。


 ちゃんと謝りたいけど‥‥もし嫌われてたら‥‥、そう思うと、今すぐ逃げ出したいと自分もいる。


奈留なる‥‥さん?」


 考え事をしている間に、しんくんが出てきていたようで、私はとっさのことで、反応が遅れてしまって、驚いて声がうまく出せなかった。


「え、あっ、ご‥‥」


 言わなきゃ、ちゃんと謝らなきゃ‥‥‥‥今言わないと、言う機会がなくなる!


「「ごめんなさい! ‥‥‥‥え?」」


 へ? なんでしんくんが謝るの?

 しんくんは、もう、謝ってくれてたのに‥‥。


「どうして、しんくんが謝るの? 私、助けてもらったのに。 ‥‥しかも偶然なのにあんな態度とっちゃって、本当にごめんなさい!」


「いや、僕の方こそごめん。 僕が気を使ったり、もう少し早く謝るべきだったんだよ。 何だかあのときは僕と奈留なるさんの前世のことを話したばっかりだったっていうものあって、あそこまで動揺されるとは思ってなかったから、僕も一瞬戸惑っちゃったんだ」


 そ、そうだよね。 元男だって話してたのにあんな行動なんだから驚いて当然だよね。


「自分でも驚いてるんだ‥‥あそこまでドキッとするとは思ってなかったから‥‥」


「そうだよね‥‥嫌だったよね? 僕だって元女なんだからそういう気持ちは知ってるはずなのに‥‥」


 そうじゃない!

 しんくんに触られて、あんなにドキドキするとは思わなかったからであって、断じて嫌だったわけではない!

 体験したこともないような感覚に戸惑っただけといいますか‥‥。


 その‥‥つまりはやっぱり恥ずかしかったのかもしれない。

 温泉に入ったときはしんくんといても大丈夫だと思っていたけど、それは水着を着けていたからというだけで、触られるのは恥ずかしかった可能性もあるのかも‥‥。


「嫌じゃないよ! 嫌じゃないけどドキドキが止まらなくって‥‥でも温泉から出て頭を冷やしたら、今度はなんであんな態度をって思っちゃって、嫌われていないか心配で」


「いや、悪いのは僕だから奈留なるさんが気にする必要なんてないよ!」


「悪いのは私で‥‥」


「僕だって!」


「私だよ!」


 こうして、深夜の温泉の出入口の前で言い合い、その後、私たち、二人が納得しあったのはそれから二十分くらい後のことだった。

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