186 二人きりの温泉
「でも、奈留さんの方は大丈夫? 男と一緒に入ってさ」
「う~ん、水着だから大丈夫だよ? それに何故か今凄く癒されているのか、心がぽかぽかしてるし」
何だろう、女の人と入っているときより緊張してないし、謎の安心感がある。
「奈留さんは凄いですね。 僕が女だったら、たぶん緊張して入れないです」
ま、まぁ、その気持ちはわからなくはない‥‥女の人を見てだけどね!
「それだったら信くんだってそうでしょ? 私が男だったら絶対に女の子が入ってきたら、驚きで、固まってしまうだろうし‥‥」
まぁ、だったらっていうか、現在進行形でダメなんだけど‥‥。
「‥‥似た者同士ってことなのかもね」
「そうかも! 何だか信くんと似た者同士って嬉しいな♪」
「これは喜んでいいことなのか、ちょっと疑問だけどね。 まぁ、奈留さんとなら僕も何だか落ち着いて温泉に入れているし、それに何だか、今少し嬉しいんだ」
「え、信くんも?」
「僕の方は理由は、何だかわからないけどね」
何故かわからないけど、嬉しいっていうのは少しわかる気がする。
「きっと何気ない日常が嬉しいんじゃないかな」
「そうかもしれない‥‥‥‥前世とは結構違うから」
もしかしたらだけど、信くんの前世も何かあったのかもしれないな‥‥。
そういえば、似ていることとか、前世のこととか、そういうのを数時間前に何か考えてなかったっけ‥‥。
あ、そういえば、少し前に似てるってだけで信くんは前世、女の子なんじゃないかって、あり得ないような推理をしていたが、今一緒にいてみて何だか、それが正しいんじゃないかって思えてくるほど、状況が似ている。
これは聞いてみるべき?
でも、間違っていたら失礼っていうレベルじゃ済まないよね‥‥。
はっ、もし外して、絶交みたいなことになったら‥‥うわー、そうなの生きていけないよ!
私は友達と遊びたいのであって、秘密を探る必要なんてないはずだ。
それに前世のことは曖昧にしようって言ってるし‥‥。
でも‥‥でも、やっぱり気になるよ!
私は信くんのことを、ただ知りたいと思った。
もし間違っていたら全力で謝ろう。
「ねぇ、信くん。 前世のことで聞きたいことがあるんだ‥‥ダメだってわかっててもどうしても気になって」
約束を守ってないから怒られるかなと思い、少し身構えていると、信くんは怒りもせず、いつも通りの優しい顔で言った。
「いや、別にいいんだよ。 答えられる範囲なら答えられるし。‥‥心の整理が出来ていないのは、まだ言えないけど。 でも奈留さんは友達だから出来るだけ隠し事はしたくないって思ってる。 いつか全部話せたら良いなって思うし」
信くんがそこまで、自分のことを友人だと思ってくれているとはとは思わなかったので、何だか凄く嬉しい。
私もいつか信くんに全部喋られるようにしたいな‥‥。
あ、話を戻そう‥‥つまりは聞いてもいいってことだよね。
そして私は勇気を振り絞り、聞きたかったことを聞いた。
「じゃあ‥‥さ、一つ聞きたいんだけど、信くんって、前世は女の人だったり‥‥した?」