182 いたずら
部屋に戻ってみると、広葉がようやく復活していた。
宣言通り、顔に落書きをされていたけども‥‥。
「プッ」
あ、由南ちゃん笑いこらえてる。
ま、まぁ変だけどね。
兄さんがやるって言ってたから兄さんがやったんだろうな‥‥。
「なんか俺の顔を見て笑われたような‥‥」
「気にするな、広葉。 お前の顔はいつも通りイケてるぜ♪」
「なんだよ、陸‥‥‥‥まぁ、そりゃ俺はいつもイケてるからな」
「クッ、何でもない」
兄さんも笑いこらえるのに必死だね。
でも蕾ちゃんがいたのに落書きされるってどういうことだろう。
蕾ちゃんなら止めそうな気がするけど‥‥。
私は蕾ちゃんに近づき、小さな声で耳打ちした。
「蕾ちゃん、あれいいの?」
「まぁ、ひーくんはからかわれたりとか、結構好きな人なので私が邪魔するのはちょっと‥‥」
いや、広葉たぶんそんな人じゃないと思うけど‥‥。
「まぁ、蕾ちゃんがそれでいいならいいけど」
「それにあれだけされても気付かない、ひーくん。 可愛い‥‥」
そうですか‥‥。
「でもたぶんあれだといつまでたっても気付かないと思うよ?」
「そうですね。 そろそろ言います」
そう言って、蕾ちゃんは広葉に話してあげたみたいで、広葉は急いで鏡で自分の顔を見た。
「陸、お前ってやつは‥‥」
「あぁ、きちんと水性ペンで書いといたぜ♪」
「そこに優しさいらないから! 初めから優しさだして!」
ま、まぁ兄さんのことだから油性の可能性も捨てきれなかったけど、そこはよかった。
「お前を運んだり大変だったんだから、そのくらいの楽しみはあっていいだろう」
「そこにいつては感謝してるけど‥‥というか、おでこに書いてある、この意味のわからない文字は何?」
「それも俺の優しさだ。 いわゆるゲームでよくある復活の呪文ってやつだな」
「いや、それで復活するわけじゃないから! それと、本当にそういうところに優しさいらないんだよ!」
おでこに書いても別に復活はしないからね。
「それで、広葉。 晩御飯のことについて聞きたいんだが‥‥」
「陸? え、あ、もう落書きの話は終わり?」
何だろう、広葉ちょっと残念そう‥‥やっぱりからかわれたりするのが好きな人なのか!
いや、ただスルーされたからだろうな‥‥。
「まぁ、腹へったからな。 広葉顔洗ってこい。 そして晩御飯のことを話してくれ」
「まぁ、言われなくても洗うけどさ。 あ、晩御飯はバイキング形式なはずだよ」
なんか旅館っぽくないな、それ。
「てっきり御膳みたいなのかと思ってたよ」
「まぁ、二日目の夜は御膳を用意してもらおうと思ってるよ。 毎回同じより良いと思って、できるだけ違う感じにしてもらったんだ」
その後、バイキングだったのだが、旅館というよりは、どこかのホテルみたいな晩御飯だった。
まぁ、美味しかったし、良かったけどね。
バイキングの中にはお造りのようなものもあり、それがとくに美味しかった。
これは明日の御膳の方にも期待が膨らむね。




