179 温泉でゆったり‥‥?
温泉に入ると緊張して話せないかと思ったが、湯気が濃くて、ぼやっとしか見えないので、固まるほど緊張はしなかった。
湯気さん、良い仕事してるね♪
すると、祈実さんがこっちに近づいてきた。
湯気で少し反応が遅れたか‥‥。
湯気さん、そこはもうちょっと加減を‥‥。
「ヒニャ!?」
祈実さんが、いきなり肌に触れてきたので、ビックリして変な声出しちゃった。
「奈留ちゃん、肌すべすべだね~」
「あ、ありがとうございます。 でも、祈実さんもすべすべだと思いますよ」
まぁ、触れるわけがないので、触らないが。
「思いますよ、じゃないよ~。 確かめてみて?」
ギャー! むりむりむりですー!
湯気さーん! 湯気さーん助けてー!
「祈実さん、それくらいにしとかないと、奈留が早々に温泉から出ちゃいますよ」
「恥ずかしがり屋さんなんだね、奈留ちゃんは」
そう言って、二人は微笑ましい顔で私をみてくる。
恥ずかしがり屋というか、別に見られるのは恥ずかしくはないんですよ? 見るのだけですからね?
「もう、お二人とも勘弁してくださいよ」
先程のことで慣れたのか、まだ目を合わせるのは無理だが、何となく二人がいる方向には体を向けることができるようになった。
はぁ、タオル巻いているとはいえ、体のラインとかは見えてるんだもんなぁ。
う、罪悪感が凄い‥‥。
「楽しそうっすね! 私も混ぜてっす~!」
あれ? この声って‥‥蕾ちゃん!?
「あれ!? 蕾ちゃん、何か用事があって遅れるんじゃ‥‥」
遅れてくるとは聞いていたけど‥‥こんなに早いの!?
「フッフッフッ、こんな楽しそうなイベントに一日遅れで行くなんて勿体ないと思って、一日かかるところを、一時間て終わらしたっす!」
大丈夫なのそれ‥‥蕾ちゃんのことだから、大丈夫なんだろうけど。
色々な人に迷惑をかけていないといいけど‥‥。
というか、いきなりの登場に驚いて、見えていなかったが、蕾ちゃん、タオル巻いてない‥‥!?
いや、別にする決まりは全くないんだけれども、私の身が持たないんですけど!
湯気さん、隠してー!
いや、全然見えてます‥‥湯気さん仕事してー!
それより、長く浸かりすぎたからか、少しのぼせたかも‥‥。
「わ、私、ちょっと暑くて、のぼせたっぽいので、先に上がらせていただきますね」
この暑さは、蕾ちゃんを見たからとかそういうのじゃないと思いたいな‥‥。
「えー奈留ちゃん、出ちゃうんっすか? でものぼせたのなら仕方ないっすよね。 明日は、一緒に洗いっこするっすよ!」
「で、出来ればご遠慮いただきたいですが‥‥。 じゃあ由南ちゃんたちもまた後で」
「わかったわ」
なんだろう‥‥温泉でゆったりするつもりだったのに、何だか全然ゆったりできなかった‥‥。
やっぱり、誰もいない時間帯に入りなおそうかな。
◇◆◇◆◇◆
一方その頃、兄さんと広葉はこんな話をしていたらしい。
「なぁ、陸‥‥」
「どうした、広葉」
「なんで女の子たちと旅行に来てるのに、部屋もそうだが、今この温泉に浸かってる時も、俺の横にいるのはお前なんだ? おかしくない?」
「そりゃ、まぁ‥‥‥‥日頃の行いじゃね?」
「またそれ!?」