178 入りましょう
兄さんと広葉の部屋に集まった私達は、今後の行動を皆で話し合っていた。
広葉が私達を驚かしたかったのはわかったけど、それでも事前にいってほしかったよ。
オープン前だから、下調べはあまりできなかったかもしれないが、ちょっとでも調べておきたかった。
「それで、これから何するんだ?」
「まずは、せっかくだし、温泉に入ろうかなと思っているんだけど」
まぁ、入りたいよね、温泉!
うん、だけどね‥‥正直、女性の方々と一緒に入るのは緊張するというか、罪悪感があるというか、なんというか‥‥。
プレオープンなので、人は全然いないだろうけど、祈実さんと由南ちゃんがいる時点で私は駄目だと思うのである。
蕾ちゃんの家で入った時も、色々と大変だったので。
「じゃあ皆さんで、楽しんでください。 私は少し外をぶらついてますので」
私はそう言って、部屋から出ようと試みるが、由南ちゃんに止められる。
「何言ってるのよ。 奈留が入ることは決定しているんだから」
いつそんなこと決まりました!?
由南ちゃん、私が苦手だって知ってるくせに‥‥。
「奈留ちゃん、入らないの!? 洗いっこしようと思ってたのに」
いやいや、出来ないです!
たぶん心臓破裂するくらい緊張して倒れます。
「そんな、出来ないですよ!」
「奈留ちゃんは、私のことあまり好きじゃない?」
そ、そんな馬鹿な、嫌いなわけがない。
「嫌いじゃないです‥‥むしろ、好きです‥‥」
「じゃあ、行こー!」
あー、結局こうなるんですね。
なんかもう諦めた方がいいかも‥‥。
「まぁ、奈留。 最悪の場合、すぐ出たらいいから。 ね?」
もう、そうしようかな‥‥。
「陸、俺も向こうに行きたい‥‥」
「そうだな‥‥。 まぁ無理だが‥‥じゃあ俺らは俺らで入るか?」
「あの、僕はあまり温泉得意じゃないので、お二人で楽しんできてください」
「奈留みたいなこというんだな。 まぁいいや、無理強いはよくないからな。 じゃあ、行くぞ広葉」
「オッケー」
◇◆◇◆◇◆
私たち三人は暖簾をくぐり、脱衣場まできたわけだけど。
本当に誰もいないんだね‥‥いや、祈実さんと由南ちゃんはいるけど。
今から入ろうとしているところは露天風呂のようだが、露天風呂なんて入るのは何年ぶり‥‥いや、前世に遡っても数回しか入ったことがないので、ちょっと楽しみ。
これは、あとはどれだけ二人を視界に入れないようにするか‥‥いや別に見たくないわけじゃなくて、罪悪感みたいなのがあるだけだから。
「奈留~、何してるの、早く行くよ」
「待って由南ちゃん、まだ心の準備ができないから!」
近くにくる!
これはもう目を閉じるしか!
「なんか避けられてるみたいで、嫌ね、それ」
「いや、そういうことじゃなくて、えぇと! ごめんなさい!」
「別に怒ってないわよ。 というか、タオルも巻いてるから、大丈夫なんじゃない?」
タオル巻いてても中々キツいが‥‥いや、何もないよりかは全然いいけど。
「というか、ここってタオル巻いても大丈夫なんですか?」
「いいみたいだよ。 あと水着も可だって、書いてあったな~。 いや、あれって時間帯で違うのかな?」
え!? 祈実さん、それは本当ですか!
というか、まだ、プレオープンなのに時間帯によって変わることなんてあるのか?
まぁ、今はその事よりも。
「水着着ましょう!」
皆がつけてくれたら、特に気にすることなく入れるではないか!
「はいはい、奈留。 早く入りましょうね~」
引っ張らないで~。
腕を捕まれた私はもう逃げられない。
結局、水着は諦めることとなった‥‥。




