177 部屋割りは
話し合いの結果、私と由南ちゃんで一部屋。
兄さんと広葉で一部屋。
そして、信くんと祈実さんが姉弟で一緒に泊まるらしい。
「久々に弟と寝てみたいという、姉の気持ちが‥‥」
「いいですけど、布団は別ですからね」
「ある‥‥え、嘘?」
という感じで、仲が良かったので、姉弟でも大丈夫だろう。
「じゃあ行きましょうか」
「ようやくね」
ルームキーを貰い、その部屋に行こうとすると、広葉の声に引き留められた。
「ちょーと待ったー! 温泉宿に来たからには、着るべきものがあるだろう! そう、まずはロビーにある、浴衣を選ぼうぜい!」
あ、本当だ。 色んな色の浴衣がロビーの一部のところに並べられている。
てっきり、部屋にあるものかと思ってたよ、浴衣。
「それはあとでもいいような‥‥」
「何をいうか磨北後輩! 一秒でも長く、女の子の浴衣姿が見たい! その気持ちが貴様にはわからないのか!」
「いえ‥‥わからないですが‥‥」
広葉、そういう発言は兄さんとか私とかの前だけでしましょうね。
もう、由南ちゃんとかドン引きしてるから!
「ま、まぁ楽しそうですから、選びましょうか」
まぁ、今選んでも、後で選んでも変わらないし。
「でも、基本は落ち着いた色ばっかりだな。 まぁハデすぎても困るが‥‥」
「派手すぎないところがまた良し!」
広葉は本当にぶれないなぁ。
「まぁ、私はこれかしら」
「あ、いいね、それ! 私もそれにしよっと」
女性の皆さんが‥‥言っても私以外に二人しかいないが、二人が良いというなら私のそれにしておこう。
「じゃあ私もそれで」
その後、帯は何となく近いところのやつを取った。
「じゃあ、準備ができたら、俺の部屋に集合ということで」
兄さんと広葉の部屋ね。
わかる、わかるよ広葉、女の子の部屋に行くのって勇気いるもんね。
まぁ、ただ今回の旅行の仕切り役だからってだけかもしれないが。
「わかりました。 行こ、奈留」
「うん」
そうして、私達はルームキーに書いてある部屋に向かった。
◇◆◇◆◇◆
「ふあ~広いね~」
自分達が止まる部屋の扉を開けると、綺麗で広い和室だった。
なんだろう、和室の匂いっていうのかな‥‥落ち着く匂いだね。
「部屋名は、桜の間だってさ。 結構良いところなんじゃない? ここって」
普通に泊まるには、値段が高いところって意味ですか?
ま、まぁ良いところなんでしょうね‥‥。
もう、床の間の掛け軸とか、色々高そうに見えるね。
「そ、それは大変なところに泊まらせていただいているようで‥‥」
「何縮こまってるのよ。 そんなことより、窓からの景色見ようよ」
由南ちゃんに言われるがまま、私は明障子を開け、窓際まで移動した。
そこから見た景色は───
「う、海!?」
え!? ここ海近いの!?
てっきり、山の方だと思っていたんだけど‥‥いや、でも来たとき山は近くに無かったな。
「海、近かったのね」
由南ちゃんもこんなに近くに海があるとは思っていなかったようだ。
海にはちゃんとビーチもあるし‥‥マジかここ‥‥。
もう、リゾート地じゃん‥‥。
なんか凄く綺麗で‥‥本当にこんなところ泊まっていいの!?
「本当に森田さんには感謝しないと‥‥」
「じゃあ早めに、浴衣に着替えますか」
「そうだね」
◇◆◇◆◇◆
浴衣に着替えた私達は、兄さん達、二人が泊まる部屋に行った。
私達は桜の間だったけど、ここは百合の間なんだ‥‥。
桜も綺麗だけど百合も綺麗だよね‥‥えぇ、この部屋も高い部屋な感じがするね。
「来ましたよ~」
部屋に来てみれば、広葉が何だか部屋で少し落ち込んでいた。
「先輩方二人が泊まる部屋が百合の部屋ってなんだか、真逆過ぎて、面白いですね」
ん? 由南ちゃん、何が面白いのかな?
ま、まぁ花っていう時点であまり似合ってはいなさそうだけど‥‥。
「由南ちゃん! 部屋変わってください!」
何故、広葉、全力の土下座!?
「いえ、荷物広げたので嫌です」
‥‥先輩に土下座されようとも、自分を曲げない由南ちゃん‥‥凄く格好いいです!
だけど、広葉なんだか可哀想なので、私は変わってもいいんだが、こうなったら由南ちゃん中々曲げないからなぁ。
私もなんで変わりたいのかはわからないのでフォローのしようがないし。
「ねぇねぇ、兄さん。 なんで変わりたいんですか?」
「さぁな? 俺も知らん」
結果、最終的に広葉が折れて、この話は終わりを迎えた。




