174 旅行の始まりは‥‥
今日は待ちに待った、旅行、一日目。
ギリギリになって、広葉は集合場所を指定してきた。
なんでここ? と思っていたらいきなりバスが来て、広葉に言われるがまま、六人はバスに乗り込んだ。
広葉から聞いた話では電車でも宿まで行けるそうなのだが、宿からバスを出してくれていたようで、今、私達は兄さん、広葉、祈実さん、信くん、由南ちゃん、そして私の六人だけの貸切状態のバスに乗らせてもらっている。
そんなこんなで、これから始まる旅行は、皆でワイワイ楽しく過ごす‥‥はずだったのに。
「くたばれ───! 広葉───!」
「死ね─────! 陸────!」
何故か二人が格闘ゲームさながらの喧嘩を‥‥‥‥。
「あ、何とか拳、出しやがったなお前!」
「俺のコンボ技にひれ伏せ、陸!」
うん、携帯ゲームの格闘ゲームをしていた。
何か前にもあったな、こんな光景‥‥。
「男子は元気だね~。 二人を見習って、信くんも騒いでいいんだよ!」
「いや、きさねぇ。 何もないのに騒いだら、それ変な人だから」
ま、まぁ騒ぐなとは言わないけど、兄さん達は少し度が過ぎているようなきはするが‥‥。
「そもそも、なんで兄さん達はあんなに熱くなってるの?」
初めの方、二人の会話を聞いていなかったので、なんでこんなに熱くなっているのかよくわかっていない。
「確か、バスに乗る直前に、バスの座席で奈留の隣にどっちが座るかみたいなことを言って、熱くなったわね」
そ、そんなことが‥‥。
「でも今、隣に座ってるのは由南ちゃんだよね?」
すでに私の隣の席は由南ちゃんで埋まってしまっているわけだけど‥‥。
「まぁ、いいんじゃないかしら? ほら、今のところ、そんなことも忘れて、ゲームを楽しんでいるようだし」
見たところ、仲良くやっているゲームしているもんね。
「絶対に勝つ! さっさと倒れろ!」
「倒れるのはお前だ、このやろう!」
うん、ゲームって人を変える力でもあるのかな?
あと、ゲーム楽しんでやっているのか、疑問が残る、言い合いだね。
「私達は私達で楽しみましょ」
「そうだね。 ふぅ、でもバス出してもらえて本当に良かったよね。 じゃないとこんなに騒げないでしょうから」
「そうね。 しかも、こんな少数なのにちゃんとしたバスを出してくれるって、今から行く宿は結構凄いところだったりしてね」
それなら凄いんだけど、チケットの量とかを見ると、やっぱりないかなぁ?
「確か、現時点では広葉くんしか場所知らないんだよね?」
うぉ、祈実さん。
今日会ってみて、やっぱりまた緊張しちゃっていて、今から三日あるので、慣れようと必死になってますが、中々難しい‥‥。
「あ、祈実さん。 そうですね。 でもやっぱり少し不安ですね」
「不安? そういう時はお姉さんが抱き締めてあげよう♪」
わぷっ、何だか久々に抱き付かれたが、何度やられても慣れないです!
というか、すごく顔赤くなってそう‥‥。
「きさねぇ、バス走ってるんだから、きちんと座ってください」
「もう、信くんは真面目だなぁ」
信くんが言ってくれたことによって、私は解放された。
嬉しいけど、心臓にはとてつもなく負荷がかかってそうだね。
まだ心臓がバクバクいってる‥‥。
こうして、私達はバスの中にいるときも楽しい時間を過ごした。