172 約束通り、一緒につくろう!
長期休み、二日目。
特にすることのなくなった私達はだらだら‥‥と言うわけではなく、兄さんに約束を守って貰おうとしていた。
「兄さん、一緒に料理作りましょう!」
「そうか、今日も奈留の手料理が食べられるのか‥‥」
作る気ゼロ!?
というか、手伝うって約束、絶対忘れてるでしょ!
「そうじゃなくて、この前手伝ってくれるって」
「そうか、奈留。 そんなに俺の病人食が気に入ったのか。 よし、やろう」
確かに美味しかったけど、そうじゃないよ!
「今回はそうじゃなくて、兄さんが調理実習で作ったパスタを一緒に作りましょう」
「えぇー。 それ俺の専門外なんだが」
専門外って、じゃあ何が専門なんですか! ‥‥病人食ですか、そうですか。
でも、調理実習で作ったんだし、一応何となく覚えてはいるはず。
「まずはやってみましょうよ? ほら、ここに兄さんが調理実習で作った時の材料とか作り順などがのった、プリントもありますし」
何故かあったんだよね‥‥兄さんがポイってしたやつかな?
「はぁ、わかったよ。 じゃあ材料買いに行くか?」
「はい♪」
こうして私達は初めて一緒に料理をすることになった。
◇◆◇◆◇◆
「よし、買い終わりましたね」
スーパーの袋を持った私達は、キッチンに材料をおろす。
「なんかいつも奈留が作るときに買うやつじゃないな?」
「そりゃ、学校の材料のままですし。 家では使わないものもありますからね」
パスタで缶とかそういうのは、あまり買わないからね。
まぁ、でも同じ材料で作った通りの手順の方が、作りやすいだろうと思い、そのままを買っている。
「俺、奈留が作るパスタの方がうまいと思うんだが‥‥」
「ありがとうございます、だけどそうしたら、兄さんが手伝えないでしょ?」
「まぁ、そうだな‥‥。 じゃあやるか」
お、兄さんもようやくやる気を出してくれたみたいだ。
「はい。 じゃあまずは缶切りで缶を開けてください」
「これ、タブないのか? というか、家に缶切りなんてあったっけ?」
「ありますよ、まぁ使うことってあまりないですけど‥‥」
最後に使ったのはいつだろう‥‥果物の缶のときかな?
「まぁ、缶切りは任せておけ。 調理実習中、何故か左利き用缶切りしかなくて。 だが、それでも綺麗に切った‥‥この俺にな!」
いや、そこそんなに溜めて言うことじゃないですよ。
でも、左利き用が用意されていることはあまりないので、それについては驚いたが。
でも何故、右利きがなかったのか‥‥うん、理由は特に聞かないでおこう。
綺麗に切れたんだったら特にいうことはないし。
「綺麗に切れるなら、特になにも言いませんけど‥‥」
「任せとけ、俺が右手を使えば‥‥あ、血が」
「えぇ!?」
何で、右利きの缶切りを使って指切っちゃうのさ!
そのあとも様々なトラブルが起こり、自分だけで料理するときの十倍は疲れたことは言うまでもない。
うん、やっぱりほんの少しのだけ手伝ってもらうぐらいが一番良いのかもしれないね。
◇◆◇◆◇◆
ちなみに、パスタは無事完成したわけだが。
「うん、普通だな。 やっぱり奈留が俺のために作ってくれるパスタの方が美味しい」
「そ、そうかな‥‥えへへ」
一緒に作るのもいいけど、やっぱり食べてもらうだけなのも、誉めてくれるし良いかなぁ、と再認識した一日だった。