171 言っておくよ
『もしもし、おはようございます、御姉様。 今ってお忙しいですか?』
電話に出ると、小乃羽ちゃんのいつもの可愛い声が聞こえてくる。
「ううん、大丈夫だよ、小乃羽ちゃん。 それで、何かあった?」
『あの‥‥旅行のことなんですけど‥‥。 やっぱり行けないかもしれないです』
えぇ!? 小乃羽ちゃん来られないの?
「ど、どうして? 何か用事でもあった?」
『はい‥‥大変申し訳ないんですけど‥‥。 もし、少し遅れてもいいのでしたら、行けると思うんですが‥‥』
蕾ちゃんと同じ感じか。
「遅れるのは大丈夫だし、来てくれたら嬉しいんだけど、一人で来るのは大変じゃない? それに急いで来て急いで帰るみたいなことだし」
『いえいえ、問題ありません! 御姉様達と旅行、楽しみですから。 いっぱい思い出を作りたいですね』
「それならいいんだけど‥‥。 私も小乃羽ちゃんとはいっぱい遊びたいし! そういえば兄さんには言ったの?」
まぁ、兄さんは彼氏だから、もう伝えてるかもしれないけど。
『一度メールは送ってるのですが、先程送ったので、まだ見ていないかもしれないですね』
「じゃあ一応、私の方からも言っておくよ」
兄さん、何時も携帯の音消してるから気づかないんだよね。
というか、兄さんには電話じゃないんだね。
『ありがとうございます、御姉様。 それではまた♪』
「うん、またね~」
はぁ、やっぱり小乃羽ちゃんとの電話は和む‥‥やっぱり慕ってくれるっていいね。
前世では後輩みたいな子はいなかったからなぁ。
そうだ、忘れないうちに兄さんに伝えないとね。
「兄さ~ん。 伝えたいことが──っと、兄さんいつの間に目の前に!」
さっきまでいなかったのに、伝え、辺りで急に目の前に来たからビックリしたよ。
「結婚はまだ早いぞ?」
いや、しないから。
というか相手がいないし、できる年齢じゃないから。
「いや、一言もそんなこと言ってないし、何処からそんな話が出たんですか」
「冗談だ、冗談。 伝えたいことってなんだ? 愛か?」
愛って‥‥そりゃ家族としては好きかもしれないが‥‥。
「愛でもないから‥‥そりゃ兄妹としては好きだけどさ」
「うん、もう死んでもいいや」
死んじゃ駄目だから! ってこんな話をしたかった訳じゃないんだよ!
「じゃなくて、伝えたいことっていうのは小乃羽ちゃんのことですよ!」
「ん、どうかしたのか?」
この反応はやっぱり携帯見てないな‥‥。
「旅行、用事があって来るのが遅れるそうです‥‥」
「まじか‥‥まぁ、なんだ‥‥たぶん大体、広葉が悪い」
いや、何でもかんでも広葉のせいにするのはよくないっていうか、また社会が悪いみたいに‥‥。
ま、まぁ蕾ちゃんの方に関していえばあるのかもしれないが‥‥。
「もう、ふざけないでください。というかメール、送ったそうですよ?」
「あ~見てないわ」
やっぱりか。
「もう‥‥まぁ仕方ないですか。 兄さん、電話じゃないとすぐに出ませんもんね」
「まぁな。 それで一回、福林さんに電話だったらすぐ出るぞって言ったら、緊張しちゃってうまく喋られないので、ま、まだ駄目です、って顔真っ赤にしながら言われた」
なにそれ、可愛すぎないか?
まぁ、電話って緊張しちゃうよね、何だかわかるかも。
そのあと私は、兄さんに小乃羽ちゃんの他の可愛い出来事などを聞いて、盛り上がった。