170 準備をしようよ
「じゃあ、よろしくお願いします」
『了解。 やっておくよ』
長期休み、一日目。
私は広葉と電話で旅行のことについてお話ししていた。
「あ、あと、そろそろ行く場所とか教えてほしいんですけど」
旅行の日にちがどんどん近づいてきているのに、一向に言ってくれないんだもんな、広葉。
『そ、それは当日のお楽しみということで。 楽しい旅行にしようね、それじゃあ、また───』
「あ、森田さん! ‥‥‥‥切られちゃった」
また、はぐらかされた‥‥。
もう! 何なのさ!
「広葉はなんか言ってたか?」
「あ、兄さん。 ううん、支度だけして当日まで待ってほしいってさ。 もう、行く場所わからないから、荷物増えちゃうかもね」
一応のためというのがあるからね。
買えたいとかだったら、大変だもん。
「まぁ、増えるっていっても、旅行の時って、奈留も俺もそこまで荷物持っていかないよな。 俺はともかく奈留は女の子なんだからもう少し多くてもいいと思うんだが」
あはは、そこはまぁ、そうなんだけど‥‥。
必要最低限の物しか持っていきたくないという、前世の頃の私と、もしものために、という心配性の今世の私がいて、どっちもどっちな感じになっている。
一応、兄さんよりは荷物は多いのだが、他の女の子達と比べると少ないかも。
いや、でも女の子でも少ない人は少ないよね。
「これでも、十分多いと思うよ? う~ん、これはいる、これはいらない。 あ、水着‥‥いるかなぁ?」
「いる、絶対いる! 持っていくべきだ!」
何で、そこだけ力強く!?
でも温泉宿に行くのに水着って必要あるかな?
「でも別に、着る機会があっても、一緒に水着も売ってるんじゃないかな? 今持ってるのも、もう小さくなってるかもだし」
今持っているのは、兄さんが選んでくれた水着だけど、最近は着ていないので、どうなのかわからない。
「そ、それでも、持っていこう。 そして行った先で良いのがあればそれも買おう」
それ、持っていく意味ないでしょ!
でも兄さんがそこまでいうなら、一応持っていきますか。
まぁ、別に学校の水着でも、いいだろうけど、二つはさすがに持っていこうとは思えないからね。
「もう、別に買う必要なんてないよ。 じゃあ一応持ってはいくよ」
「奈留がいい子でお兄ちゃんは本当に嬉しい‥‥」
兄さんが喜んでくれるなら、私も嬉しいけど。
荷物‥‥また増えちゃったな‥‥。
何だか複雑な気持ちになっていると、誰かからの電話がきたのか、携帯が鳴り出した。
広葉が場所を言う気になったのかな?
あ、小乃羽ちゃんだ。
小乃羽ちゃんが電話って何だか珍しいような。
旅行に関することはわかるけど、何だろう。
持ち物がわからないとかかな?
私は疑問に思いながら、電話を取った。