168 急すぎるから!
長期休みまで、あと一日となり、今日は学校の終業式。
普通なら全校生徒で集まったあと、各自のクラスで必要事項などを確かめ、解散するのだが‥‥‥‥先生が来ない。
もう、何やってるのさ、広葉!
ちゃんとするって前にも言ってたはずなのに。
「遅いね、詩唖先生」
「何時ものことじゃない。 もう慣れたわ」
すると、廊下の方から足音が聞こえ、その足音がどんどん大きくなっていった。
あ、ようやく来たみたいだ。
「お、遅れてごめんなさい。 ちょっと先生同士の話が長引いちゃって」
‥‥‥‥‥‥‥‥え?
え、何々!?
謝ってる? あの詩唖先生が少し遅れて謝ってる!?
「奈留、あの人誰かしら?」
うん、詩唖先生ってことはわかる。
それに私は優しくなった理由も、中身が広葉ということも知っている。
だけどね。
「うん、誰だろうね」
変わりすぎだからね!
徐々に、徐々にしないといけないから!
何いきなり、元の詩唖先生の性格のまんまを演じようとしてるの!
クラスの皆も驚くことだったからか、ざわざわしている。
「あの詩唖先生が!?」「猫被ってるのか!」「でも凄く綺麗に見える‥‥」「誰かに洗脳を?」「恋で変わったとか?」「ついに狂ったな」「うわっ俺、前の暴力的な先生が好きだったのに」
皆、結構酷いこと言うね。
あと最後に言ったやつ! 多分君が、詩唖先生が元に戻れない理由そのものだね!
私が詩唖先生を見ると、詩唖先生も私を見ていて、何だろう‥‥口パクで何か言っているみたい‥‥。
‥‥これで大丈夫か?って言っているみたい‥‥うん、駄目に決まってるね!
回りが未だかつてないほど、騒いでいたので、私は全力のジェスチャーで詩唖先生にダメだということを伝える。
ジェスチャーをしていても回りが気づかないくらいなんて結構異常だよね。
「奈留‥‥なにしてるの?」
あ、由南ちゃんはがっつり私の方を見てたみたいです。
は、恥ずかしい‥‥。
「いや、由南ちゃん、これは‥‥」
私が言い訳を開始しようとしたそのとき、何だか聞き覚えのある声が響き渡った。
「少し、黙れよゴミども!!」
あ、詩唖先生。
結局、何時ものに戻っちゃったみたいだ‥‥。
「「「「あ、戻った」」」」
クラスの皆も、初めのあれは幻覚か何かかと勝手に解釈し始め、何時ものクラスに戻った。
はぁ、これ徐々にでもなかなか大変そうだな。
でも、いきなりあそこまで変わるのはビックリしたよ、後で詩唖先生、いや広葉にちゃんと言っておかないとね。
でも、広葉も早く戻りたくて焦ったのかもしれないしね。
ちゃんとフォローもしておこう。
「じゃあ、長期休みの注意事項を言う。 基本的には何をしてもいい‥‥以上だ!」
いや、ダメだから!!
うん、やっぱり戻るのには時間がかかりそうです‥‥。