166 誘うことは‥‥
まだまだ、長期休みは来ないかと思ったら、あっという間に終業式の数日前になっていた。
旅行が楽しみだったから、時間が早く流れたのではないだろうかというほど、早い感覚だった。
でも歳を取るごとに短く感じるっていうよね。
いや、中学生なんだから、まだそんなことはないだろうけど。
「なにボ~っとしてるの、奈留。 ‥‥‥‥こいつ死んでる!?」
なんで死んでいると思ったし!
ただ考え事していただけだよ、由南ちゃんの冗談怖いよ!
「いや、由南ちゃん、死んでないから! というか、由南ちゃんがそんな冗談珍しいね」
「いや、何となく思い浮かんだから言っただけなんだけど、それでなにか考え事?」
「ううん、もうそろそろ旅行だなぁと思ってさ」
何だか広葉にはどんな場所とかは聞いても答えてくれなかったから、何となく想像して楽しんでいる。
「あぁ、言ってたわね、そんなことも」
「由南ちゃんも来るんだよね?」
「えぇ、そうね。 予定がなければ行けると思う」
遊園地の時は断られちゃったからなぁ。
是非とも今回は一緒に行きたいものである。
「ということは現時点で行くと言っている人が五人ということになるわけだ‥‥」
私、兄さんと広葉に由南ちゃんと小乃羽ちゃん。
定員からしたら半分だね。
「ねぇ、奈留。 あと誰を誘うつもりなの?」
「ん? 信くんとか、そのお姉さんの祈実さんとか、蕾ちゃんとかかなぁとは思うけど」
まぁ、私の交遊関係って広くなったように見えて、数えてみるとそこまで多くないんだって実感するね‥‥。
「うん、まぁそのくらいなら楽しいんじゃない? 正直、知っている人達で行った方が楽しいだろうし」
本当ならそこに前世の広葉と花さんも入れて、十人で旅行したいところけどたぶん誘っても来てくれなさそうだもんね。
先生って仕事もあるだろうし、無理は言えないよね。
まぁ、それに花さんとか広葉とか知らないもんね、皆が。
「昼休みになったら信くんと蕾ちゃんに声をかけてみようかな」
「磨北くんの方は、時間がなかったら私が誘っておこうか?」
え? いいの?
「え!? 由南ちゃんは基本的には手伝ってくれないものかと思ってたから予想外だよ!」
「私だって手伝うときは手伝うわよ」
でも、何時もはこういうことあまり手伝ってくれないし。
‥‥ん? もしかして誘うのが信くんだからとかかな?
「自分から誘うっていうからさ‥‥ねぇ、もしもだけど、信くんのことが気になるとか?」
「ん~ある意味では気になってはいるけど‥‥」
え、由南ちゃん、信くんのこと‥‥。
‥‥何だろうこの少し寂しいような気持ちは。
「由南ちゃん‥‥信くんのこと好きなの?」
「え? 何処からそんな話が‥‥‥‥あ、そういうことじゃないわよ。 別に異性として気になっているとかはないから。 これは絶対にね」
そうなんだ、何だろう‥‥少し嬉しいな。
由南ちゃんといる時間が減らなくて良かったよ!
クラスで一人は寂しいからね。
「そっか、じゃあ、信くんの方はよろしくね!」
「まぁ、奈留に時間がなかったときはそうするわね」
え? あ、時間がなかったらって‥‥あったら手伝ってくれないのね!?
やっぱりいつも通りなんだね、由南ちゃんは‥‥。




