155 どうしてこうなったんだろう‥‥
「あの‥‥なんで、私メイド服を着せられているんでしょう?」
パシャ、パシャ!
「写真を撮るためだよ?」
何故、写真を───凄い、シャッターが眩しい!
というか、なんで由南ちゃんも蕾ちゃんも撮ってるのさ!
「なんで二人も撮ってるのさ!」
しかも、蕾ちゃんに至っては、凄いローアングルから撮ってるし!
ロングスカートだから大丈夫だけど。
「それはまぁ、可愛いから?」
「凄い良い感じっす! 私が見たかったのはこれっすよ、奈留ちゃん!」
「あーそれはよかった‥‥のかな?」
三人に喜んで貰えたなら、私の羞恥心なんて安いものだよ‥‥‥‥何だろう、でも、こうなってくると少し恥ずかしい!
「ここはいつからメイド喫茶になったんだ?」
ま、マスター!?
「すみません、マスター! いえ、これは別に私が着たくて着たわけではなくてですね!」
パシャ
「何でマスターも撮るんですか!?」
「いや、何となくそんな空気だったから」
そこは流されなくていい空気ですよ!
マスターはしっかりしていてください!
「本当にこんなメイドさんが欲しい‥‥ふぅ、満足だよ、夕闇ちゃん」
「また、お前の仕業か、蓮佳。 あまり無茶をさせるなよ。 夕闇は昨日熱だったんだろ」
別に服を着るくらいはどうってことないですよ。
まぁ、お詫びがメイド服とは思ってなかったし、ここまで恥ずかしいとも思ってなかったですけど。
「はっ、そうだった! ごめんね、夕闇ちゃん」
「いえ、激しい運動でもしない限り、大丈夫だと思いますから。 特に問題はないですよ」
「う~ん、でも色々頑張ってくれた奈留ちゃんのために、今日はケーキを振る舞って進ぜよう!」
そう言って、蓮佳さんは店の奥へと入っていった。
「え? いえ、今日は手伝うために‥‥」
「あぁ、いいんだ。 元々あいつは仕事をしてなさすぎるから。 それに蓮佳は、手伝うとかいうと本当に何もやらないし。 だから夕闇はいてくれるだけでいいんだ、特に何かする必要はない」
マスターがそういうなら、そうしますけど‥‥。
でも、メイド服を着ておいて、客だというのも無理があるので、再度私服に着替えにいこう。
「じゃあ私、着替え直してきます」
「待って、奈留ちゃん! 最後にメイドさんっぽい台詞を言ってから、着替えて欲しいっす!」
メイドっぽい台詞?
そもそも、私、メイドさんってそんなに詳しい訳じゃないし。
まぁ、一度やってみよう
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様‥‥‥‥? んっ、ちょっと恥ずかしい‥‥かな」
こ、これでいいのかな? 何だか間違えているような気がするんだが‥‥。
「いいっすね!」
「そうだね! 首を傾げているところとか、照れているところとか、慣れてないメイドさんって感じがして、またいいね! さすが夕闇ちゃん!」
いえ、別にそう思ってやっていたわけでは‥‥というか、いつの間に帰ってきたんですか、蓮佳さん。
両手にはきれいに飾り付けされているケーキを持っていた。
「次は萌え萌えキュン、とかどうっすかね」
「それはいいね、夕闇ちゃんがいうと、ギャップとかも合わせて最高だね!」
私の知らないところで、話が進んでいる!?
すると、マスターが急に私に耳打ちする。
「夕闇、早く着替えてこい」
「‥‥はい、マスター。 そうします」
無茶な要求をされる前に、私は暴走している二人の視界を掻い潜り、ロッカー部屋に走った。