151 影で助けてくれた君
そういえば、前世でも一度、熱を出したことがあった。
そのときは今と違って、兄さんのように看病してくれる人もいなかったので、自分一人で何とかしようとしていた。
家事は妹はしなかったから仕方がないけど、あのときは誰かに変わってほしいなんて思ったっけ。
あれ、でもあの時って‥‥。
誰かが家事を変わってくれたんじゃなかったっけ?
いや、いつの間にか洗濯から、色々と、まるで自動でやってくれているように、自分がやってないのに出来てたな‥‥。
そのときは何だか熱だったこともあり、妖精がやってくれたんだ、なんて変な解釈をしたような気がする。
まぁ、うろ覚えで、何時のことだったかさえ覚えてないんだけどね。
「何だか、懐かしい‥‥広葉と再会したから思い出したのかな」
「何を思い出したんだ?」
あ、詩唖先生‥‥中身は広葉だけど。
「昔、熱だしたときのことを少しね‥‥って! なんでいるの!?」
いつの間にか、ベッドの横にいた広葉。
どこから入ってきた!?
「熱出て休むっていうからお見舞いに。 昨日は色々あったからもしかしてそのせいで熱を出したのかと責任を感じてな。 デカイ方の陸に言ったら、すんなりいれてくれた。 入れ違いで学校に行ったみたいだがな」
「兄さん、ちゃんと行ったんだね。 広葉もありがとね、でも昨日のせいじゃないよ、きっと。 たぶん無意識に疲れてただけだよ」
「それならゆっくり休め。 俺も少しの間ここにいるから」
そうなんだ、広葉ここにいてくれるんだ‥‥。
「ねぇ、広葉。 教師の仕事は?」
「めんどくさいし、陸の方が大事だ!」
こいつ絶対休む気だー!
兄さんといい、広葉といい、なんでこうなるんだ。
「ダメだからね」
「‥‥有給とるわ」
大丈夫なのかそれ!?
急に有給は無理っていうか、教師は有給、長期休みの時とかしかとれないって聞くけど!
平日休むって普通に出来ないんじゃないかな?
「いや、出来るならそれでいいんだけど。 私ももうちょっといてほしい気分だし‥‥」
何だか一人は少し心細い‥‥。
こんなことあまりなかったのにな。
「あぁ、もう少しいるよ。 そういえば、何となくリンゴと栄養ドリンク買ってきたんだが、リンゴ、剥いてやろうか?」
「ありがとう広葉。 でも、果物ナイフしかないよ?」
包丁で切るのが慣れていたら、難しいんじゃないだろうか。
「いや、大丈夫だ。 たぶんいける」
そういって広葉はキッチンに果物ナイフを取りに行く。
そういえば、広葉はずっと詩唖先生だったってことは私が包丁が苦手だってことも知ってたのかな?
そういえば、調理実習の時も包丁じゃなくてナイフのようなものだった。
そういうところも、色々裏で助けてくれていたんだなぁ。