148 理由と意味
「それで、蕾がなんであんな行動をしたかなんだが、一つは先程言った、過去を変えようとすると止まるということが、何故かこの世界では起こらないんだ。 それがどんなことでも、もう起こらないのか確かめるためだって言っていた。 まぁ、あそこまでぶっ飛んだことをやるとは思わなかったがな」
え、この世界では起こらない?
どういう原因なんだろう‥‥でも広葉が知ってるならもう言ってくれているよね。
でも、さっきの話からすると。
「じゃあ、広葉が詩唖先生になる意味ないんじゃないの?」
「あぁ、本当はそうなんだが、それを知る前に変わったし、この姿の方が陸を見ていやすかったからな。 それに、これは他にも理由があってな。 まぁもう少しはこの姿だ」
大人になった広葉はどんなのなんだろうと、思ったが、ワガママはダメだよね。
でも、あの殺す演技は確認のためかぁ。
「そうなんだ。 でも、その一つの理由じゃ、なんだか、あそこまでやる必要あったのかなって思うところはあるかな」
「まぁ、一つ目の理由は、ついでみたいなものだしな。 あと一つの理由がたぶん主な理由だ。 蕾はお前のまわりに、この世界を変えたやつがいて、しかもお前を密かに大事に見守っているんじゃないかと考えていた。 だからお前が危険な目に遭えば、何かしらのアクションがあるんじゃないかと思っていたみたいだ」
「だから、蕾さんはあのとき、誰も来ないなんて失敗って言ってたのか‥‥」
あのときは恐怖でちゃんとしたことは覚えていないが、確か言っていたはずだ。
「だから蕾の方も、小さな出来事も見逃さないように色々と準備していたみたいだが、俺が止めたから、特になにも掴めず、少し前まで不機嫌だったんだ」
あぁ、だからさっき、少し納得いかないような表情をしてたのか。
今の話を聞いたら、少し蕾さんの方の気持ちもわからないでもないよね。
やっぱりわからないことは私だって気になる。
蕾さんみたいな頭の賢い人はもっと知的好奇心があるだろうし。
「そうだったのか‥‥まぁでも、何となくだけど状況は理解できたかな。 まぁ、つまりは必要なことだったってことだよね♪」
「‥‥あんまり、ちゃんと理解してないっぽいな。 まぁ、そういうことだ。 正直、話す必要は無かったかもしれないがな」
「そんなことないよ! 聞いて後悔なんてなかったし、逆に嬉しかったぐらいなんだもん」
広葉がそんなに頑張っていることを知れてよかった。
「そうか‥‥それなら俺も、言ってよかったな。 ‥‥そうだ陸、 さっきの話なんだが、もしお前や世界をこんな風にしたやつがいたとしたら、会いたいと思うか?」
どうなんだろう。
昔だったら絶対会いたいって言っていたような気がするが‥‥。
「お礼は言いたいかな。 こんな人生をくれたことを。 でも出てこないってことはきっと見つけてほしくないかもしれないし、どちらともいえないかな」
元々は今世の広葉が私のことを知っていたことから、なんで知っているのか気になって、知りたいと思うようになったが、その正体が前世の広葉とわかって、なんだか満足してしまったというのもある。
「そうか‥‥じゃあ、もしそんなやつがいたら、俺がお礼を言っておいてやるよ。 そしたら悩むこともないだろ?」
「そういうのは自分で言わないと意味がないような気がするけどな‥‥でもありがと」
◇◆◇◆◇◆
「あ、そういえば、まだ聞いていないことがあったんだけど、この世界の広葉に私のことを話したのはわかるんだけど、磨北信くんに電話したのってどうしてなの?」
まぁ、たぶん、信くんが転生者なのか確かめるためとかそういうのだったんだろうけどね‥‥。
「電話? そんなのしてないが‥‥」
‥‥あれ?