14 休日
今日は土曜日で、男子テニスの練習試合があるため、急遽部活がお休みになり、家でのんびりとしていた。
「あ~なんだか暇だなぁ」
もうなんか老後みたいになってるな。
「奈留がなにもしていないなんて珍しいな」
いつの間にか兄がそこにいた。
「兄さん‥‥まぁそうかもね。 でもやることも特にないし‥‥」
家事も全て終わらせてしまい、尚且つ趣味がない私にはすることがない。
あ~こんなことならもっとゆっくり掃除するんだった。
手早く出来てしまう自分を呪いたい~。
あれ? なんか私うざいな!
「そういうことなら、何処か買い物でも行かない?」
「え? でもまだ食材も、日用品もあるよ?」
「もう完全に主婦だな。 そうじゃなくてデパートでブラっとしようよ」
「えぇー効率が悪いよ。 欲しいものが出来たときにいけばいいじゃん」
そう、出来るだけ決めてからすぐ行き、すぐ帰る。
別に外に出るのがイヤというわけではないが、長い買い物は疲れる。
「奈留ってたまに男みたいな所あるね」
まぁ元男ですから。
逆になんで兄さんはウィンドウショッピングなんてしたいんだろう。
「別にいいでしょ。 でも何で行きたいの?」
「奈留と一緒に買い物を楽しみたい。 それじゃあダメか?」
「‥‥もう! わかったよ。 支度するから待ってて」
‥‥全く。 全く兄さんは仕様がないんだから。
私は急いで自分の部屋で支度をした。
◆◇◆◇◆◇
前世の頃、私は兄妹で買い物をする人達は存在しない、ファンタジーだと思っていた。
まぁ実際存在するし、そういう人たちに私は憧れた。
別にあの前世の妹としたかったわけではないが‥‥。
でも実際してみると、別に特別でも何でもなく、ただただ普通のショッピングだった。
でも私はそれでも嬉しかった。
兄妹で買い物が出来る。 何だか夢のようだった。
「よし、奈留。 奈留の下着を見に行こうか」
うん、夢であってほしかった。
「行くわけないでしょ! 一人でも恥ずかしいのに更に恥ずかしいわ!」
何処の妹が、兄と下着を見に行きたいと思うのだろうか?
私一人でもまだ馴れていないのに、何故追加で恥ずかしい思いをしないといけないんだ!
「え? じゃあ他に何見るの?」
なに、下着以外見るものない、みたいに言ってんのこいつ!
そもそも兄さんが誘ったんだよね!
「もう、服でいいでしょ? 行くよ兄さん」
「下着も服‥‥何でもない! よし、奈留に似合う服を俺が選んでやる!」
「別にそんなに服はいらないんだけどなぁ」
前世は三着あればなんとかなったし、今世でも服にはあまり興味がない。
なので、コーディネートはよく分からない。
だからか、兄がたまにこうして無理矢理連れてくることがある。自分ではよくわからないので、選んでくれるのは嬉しかったりする。
同じ人間だったのに、こうもセンスが変わるとは‥‥。
こういう時は兄はとてもカッコいいと思う。
「奈留は極力肌がでない服装にしなければ‥‥」
「別に出てもいいと思うけど‥‥」
スカートも初めは苦手だったのだが、特に今はなにも思わない。
これから暑くなっていくんだし、少しぐらい短くしてもいいと思うが‥‥。
「駄目だ。 絶対に認めない! 俺以外に肌をさらすなんて!」
なんか、誤解を生む言い方だな。
「いや別に兄さんにも見せないから。 あと、制服で普通に足出てるよ」
「制服も禁止だ!」
「なに言ってんの!? 無理に決まってるでしょ! もう、服はあとにして、お昼にしよ。 もう十二時過ぎてるし」
「そうだな。 食べたら、服探し再開だな」
出来れば違うものにしたいのだが‥‥。
「はぁ、出来れば手短にしてね」
「任せろ」
大丈夫なのかなぁ。




