143 あの頃の俺は(6)
森田広葉くん視点です。
タイムマシンを作ると宣言してから、俺は色んなことを頑張った。
蕾から話を聞いたり、勉強したり、どういう構造なのかを理解したり、どんな道具が必要なのか。
材料は高校の時に貯めたバイトのお金を使って揃えた。
夜も勿論、大学を休んででも、俺は作業に取りかかっていた。
蕾はそんな俺を応援していて、でも心配もしていて、何か言おうとしているようだったが、結局は何も言われなかった。
でも、こんなにも大変なはずなのに、俺は生きることに希望を持っていて、尚且つ楽しかった。
あぁ、バイトをしていたときも同じ気持ちだった。
あんないいやつが、幸せになれないなんて俺は間違ってると思う。
俺は陸のためなら頑張れる。
そんな生活が、もう二年も続いていた。
◇◆◇◆◇◆
「もう、この春で同級生になっちゃいましたよ? 先輩」
「じゃあもう先輩じゃなくて、同級生だろう」
「ひーくんを皮肉ったんですよ~だ。 でも少し嬉しくもある私です♪」
なんだそれ、と思いつつも、蕾の笑顔につい俺も微笑む。
俺はタイムマシンを作るため、大学をほとんど休んで、蕾の家に泊まり込んでいた。
悪い気はするが、ここでしかこんなデカいの作れないし、蕾も喜んで許してくれた。
でも、それだけの時間を費やしてもまだ、完成には至らず、二年も留年してしまったわけだ。
そんな俺を両親は怒るかと思いきや、両親は、今やるべきことを全力で頑張れ、と言ってくれた。
そんなこともあり、俺はタイムマシンを完成させるため、すべての時間を作ることに費やすことができた。
そして‥‥ようやく‥‥。
「ようやくできたな、タイムマシン‥‥」
「えぇ、本当に頑張りましたね、ひーくん」
俺はその日、遂にタイムマシンを作り上げた。
◇◆◇◆◇◆
俺は完成したことに感動して、物思いにふけっていた。
そんな俺を蕾は暖かい眼差しで見ているとこに、少し時間が経った頃に気付き、心のなかで恥ずかしがっていると、蕾が俺に話しかけてきた。
「それで、どうしますか、ひーくん」
「どうとは?」
「ひーくんが、試運転を始めるのは何時かなぁと。 まさか、いきなり本番なんて言いませんよね?」
いきなり本番の方がドラマがあって良いかもしれないがな。
「そんな賭けみたいなことはしない。 会えなくなったら元も子もないからな。 だから明日からにしよう。 今日は、いきたい場所があってな」
完成したらいこうと思っていた場所に。
二年も行ってないからな‥‥。
「ついていっても?」
「駄目とは言えないが、別に蕾が行っても楽しくはないと思うが‥‥」
「それでもついていきます!」
本当に、来る意味はないと思うんだがな‥‥。
◇◆◇◆◇◆
「墓地‥‥ですか‥‥」
「あぁ。 ここに陸の墓があるんだ」
俺が完成したら来たかった場所は陸のお墓。
陸に良い報告が出来るまで、行くのを我慢していた。
陸の前だと弱音を吐いちゃいそうだったからな‥‥。
陸のお墓の前に行くと、ちゃんと綺麗で、花もお供えもされていた。
少し前に陸の親でも来たのか。
‥‥まぁ、いい。
「陸、ようやくお前に会えるかもしれないところまできたぞ。 もうすぐ、もうすぐだ‥‥」
‥‥‥‥よし、行ってくるよ。
俺は立ち上がって、蕾の方を向くと、蕾は空気を読んでか、何か言ってくる訳でもなく、黙ってお墓の方を見ていた。
「行こうか、蕾」
「はい、ひーくん♪」




