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142 あの頃の俺は(5)

森田広葉くん視点です!

「もう一度?」


 ‥‥会えるはずなんてない。

 こいつは何を言ってるんだ。


「もし、もう一度、そのりくさんに会えるかもしれないなら、こことは違う苦痛を味わうことになっても、ひーくん。 会いたいですか?」


 会えるなら、痛みや苦しみなんて、我慢できる。


 でも‥‥無理だ、会えない。

 死んだ人間にはもうどうやったって会えないんだから。



 ‥‥でも、もし本当に会えるなら‥‥。




「‥‥会いたい。 俺はりくに会いたい」



「はい、その願い、私が叶えてあげましょう♪」


 つぼみは胸に手を当て、自信たっぷりにそう言った。




 ◇◆◇◆◇◆




「でもどうやってそんな願い」


 会いたいとは言ったものの、さすがにつぼみでもこんな無茶なこと叶えられるわけがないと俺の心の中では考えてしまう。

 この女の子に俺のことで無茶なことや、悩んでなんて、して欲しくはない。


「この部屋です。 入ってください」


 部屋のドアは頑丈そうなドアで、なんだか金庫のようだった。

 その部屋に足を踏み入れると、リビングなどで見た機械の量の比べ物にならないほどの量の発明品らしきものがあった。


「なんだここ」


「ここが発明部屋です。 それで、ひーくんに見せたいものはあれです」


 つぼみが指差す方には、巨大な金属の塊のようなものがあり、俺はすぐにそれが今までの発明品とはレベルが違うことが直感でわかった。


「なんだ‥‥あれ」


 俺がそう聞くと、すぐには返事はなく、つぼみは何か言うことを迷っているようだった。

 一体なんの発明品をなんだ。


 するとようやくつぼみは、ゆっくり喋りだした。


「‥‥時間遡行ができる‥‥‥‥いわゆるタイムマシンというやつですよ。 でも、まだ完成はしてません」


 タイムマシン‥‥そんな空想上のものが、未完成ではあるが、俺の目の前にあるなんて。


「す、凄い」


 つぼみが言っていたのはこれで、りくに会いに行くってことなのか。


「そういっていただくのは大変恐縮なんですが、まだまだ成功の確率は低いです。 それに、私はもうこれは壊そうと思っていたので、少し前から解体作業に入っていたんです」


 解体‥‥作業?


「なんで!? こんな世紀の大発明みたいなものを壊すなんて。 発表やらなにやらで、きっと色々変わる───」


 それにそんなことされたらりくに会えなくなる‥‥。


「いえ、私にはお金も名誉もいりません。 そもそも、これを作ったのだって、貴方に会いたかったからです、ひーくん」


 おれ?


「‥‥どういうことだ?」


「ひーくんは覚えていないかもしれないけど、私は昔をひどく後悔していたんです。 貴方の名前や、貴方の家。 何で私はその一つでも聞いておかなかったんだろうと。 私は戻りたかった。 あの頃に‥‥」


「それで、このタイムマシンを?」


「‥‥はい、そうです。 私は中学、高校とすべてを投げ打って、このタイムマシンを完成させようとしたんです」


 そのために、昔からこんな凄い発明をして‥‥‥‥。


 ‥‥やっぱりつぼみは凄いな。

 りくが死んで、俺が呆けている間にも、つぼみは自分の欲望に真っ直ぐに走っていたんだから。

 そんな生き方‥‥俺には考え付かなかった。


「でも、私は見つけることが出来たんです、貴方を‥‥。 なので、私にはこのタイムマシンはもう必要ないんです。 でも、ひーくん。 貴方は必要なはずです、親友と会うために」


「俺は‥‥」


「ひーくん、私は貴方の為なら何だってしますし、設計図だけならもう完成はしてるんです。 だから、今度は貴方の願いを私は叶えてあげたい。 りくさんに会わせてあげたい」


 これでいいのか‥‥。


 俺はつぼみになにもしていないのに‥‥ただ覚えていない小学生のことがあるだけだ。

 それなのにこんな後輩に頼りっぱなしでいいのか?

 俺はこんなに駄目なやつだったのか‥‥。


 でも、俺にはつぼみみたいに何でもできるわけじゃない。

 人間には向き不向きがあるんだ。

 俺には無理だ、出来っこない。

 俺は後輩に頼るしか‥‥。


 でも‥‥いや‥‥俺は‥‥。


「‥‥‥‥すまない、つぼみ。 俺、やっぱり駄目だわ」


「え‥‥」


 俺は‥‥俺はやっぱり‥‥。






「俺はお前と同じように自分の力で願いを叶えたい。 だから‥‥俺にタイムマシンを作らせてほしい! それと、つぼみの力も必要なんだ、俺の願いを手伝ってくないか?」


 やっぱり俺は、自分の力でお前に会いたいよ、りく


「‥‥‥‥はい、ひーくんならそう言うと思ってました♪」

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