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141 あの頃の俺は(4)

森田広葉くん視点です。

「ひーくん、止めないでください! 私はこの壊れている機械を直さなくてはならないので!」


 まだ認めない気かお前。


「いや、壊れてないだろ! それより、さっきまで忘れてたが、なにか手伝いを頼むために俺を連れてきたんだろ?」


「は! そうでした。 なんだかひーくんが家にいることに少し気持ちが高ぶってしまって。 じゃあこっちの部屋に来て下さい」


 そんなはっきり言うのかよ。

 つぼみには恥ずかしいとかはないのか‥‥気にしていなさそうだな。


 でも、めちゃくちゃ部屋があるな。

 しかも、一人で住んでいるっぽいしな。


「お前、独り暮らしなのか?」


 まぁ、大学生で独り暮らしなら珍しいこともないが、正直この性格で両親と上手くいっているとは思えなかった。


「えぇ、家族なんて色々邪魔なだけですから。 それに特に両親も私の独り暮らしに何も反対はしませんでしたし。 きっと私になんて興味がない人たちなんです」


 そんなことないだろ、と以前の俺なら言っていたかもしれないが、何もわからないのにそんなこと‥‥今の俺には言えないな。

 それに、俺が言ったって聞かないだろ、こいつは。


「そうなのか。 まぁ、そういう親もいるかもな」


「別にいいんですよ。 私にはひーくんがいますから」


「俺は別にお前の所有物じゃ──」


 所有物じゃないと言い切る前に、つぼみが会話を被せてきた。


「そんなこと言ってませんよ♪ それに両親は別にどうでもいいんですよ。 私は今楽しいですから」


「そうか」


 つぼみがそう言ってるんだから、そうなんだろう。


「というか、ひーくんは、人の心配より、自分の心配をしてください。 ちゃんと寝てますか? 以前よりは薄くなりましたが、目の隈もまだありますし」


 つぼみに心配をされるとはな。


「大丈夫、寝てるよ」


 いや、本当はあまり寝ていない。

 あの最悪の日から、ベッドに入って、目を閉じると、りくのことを思い出して、俺はあまり眠れなくなっていた。


 最近は無理やり寝ているが、つぼみと一緒にいる時間が長いせいか、まだそこまでちゃんと寝ていないのがバレているようだ。


「嘘、寝てないですよね」


「嘘じゃ‥‥‥‥あぁ昨日は寝てないな」


 真剣なつぼみの目に俺は誤魔化すことができなかった。


「また、りくさんのことですか?」


 話すつもりはなかったが、こいつには以前、りくのことを話している。

 その時、初めてお酒を飲んだからつい色々喋ってしまったようだ。

 それで、俺はもうつぼみの前ではお酒は飲まないことを神に誓ったくらい後悔した。


「お前には関係ない」


「関係あります! 三年以上同じ事を思い出してるんですよね? 私はひーくんに昔みたいに元気になってほしいんです」


「だからってどうすることもできないだろ! 俺は‥‥‥‥いや、すまない。 なんでもない」


 八つ当たりなんて‥‥りくのことはつぼみには関係がないのに。


 つぼみが言ったことはなんだか俺には、りくのことを忘れろと言われているような気がした。

 でも俺は自分が楽になるために、忘れるなんてことはしたくない。

 俺はあいつの親友なんだから。


「そんなに、りくさんという方が大事ですか?」


「あぁ、当然だ」


 とても大事な‥‥親友だったんだ‥‥。






「じゃあもう一度、その人と会えるかもしれないと言われたら、ひーくん。 貴方はどうしますか?」

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