138 あの頃の俺は
途中で視点が変わります。
「嘘、あの人が‥‥蕾ちゃん?」
見たことあるなぁ、とは思っていたのだが、あれが、成長した蕾ちゃん。
‥‥‥‥成長しすぎて全然わからなかった!
いや、確かに今思えば、蕾ちゃんに似てたんだとわかるが、あの可愛い感じの蕾ちゃんから、あんな大人な女性になるなんて誰が予想しただろうか‥‥。
「やっぱり、気づいてはいないと思っていたが‥‥お前鈍すぎないか? あいつの場合は姿変わってないぞ。 成長しただけだ」
「いや、あれは変わりすぎでしょ! しゃべり方とかも全然違うし」
「俺が出会ったときにはもうあれだったから特になんとも思わなかったが」
そっか、前世では広葉と蕾ちゃんは私の知る限りでは知り合ってなかった。
ということは、大学生になってから会ったってことか‥‥。
「でも、そうか‥‥蕾ちゃんが‥‥。 蕾ちゃんの名前を出されたら不可能なものでも出来そうな気がするけど」
「そうだな、あいつは凄いやつだよ」
何だか、二人が今どんな関係なのか気になってきちゃったな。
「ねぇ、二人の出会った話とか、来た経緯の話を聞かせてよ」
「まぁ、その方が今の状況も理解できるか。 わかった‥‥。 陸が死んでから俺は───」
こうして、広葉は前世のことを話始めた。
◇◇◆◆◇◇◆◆
陸が死んでから、俺は‥‥生きる意味を失っていた。
陸のために就職をしようとしていたが、もう就職しても意味がないと思ったので、俺は大学に進学にすることにした。
なんの目標もなく、ただただ勉強をする毎日。
勉強が嫌いな俺だが、その時は空いた時間があればやっていた。
勉強の手を止めてしまうと、陸のことを思い出してしまうから。
何故助けられなかったんだ‥‥と。
夜、思い出して、眠れないこともよくあり、その時間も勉強した。
そのせいか、俺の成績はいつの間にか上がっていき、テストの順位で一位をとるほどになっていた。
その後、先生から勧められた、大学に進学した。
入ってから二年はただ適当に大学を過ごしていた。
そんなことが三年目も続くんだろうと思っていると、ある日、大学内を歩いていると、とある出来事が起きた。
「ひーくん! ひーくんですよね!」
全く知らない女からひーくんと呼ばれたことだ。
その女の名前は蔭道蕾。
小学生の頃に俺と会ったことがあるらしい。
こいつが俺の人生を大きく変えることになった。
◇◆◇◆◇◆
蕾に付きまとわれてから、三ヶ月。
すっかり蕾の存在にも慣れた。
休日にも連絡をしてきたり、何だか彼女みたいだな‥‥‥‥いやいや、断じて違う!
その日俺は、蕾の家にお呼ばれすることになっていた。
自分の部屋の発明を手伝ってほしいとかなんとか。
絶対なにもできないだろうけどな。
その頃には蕾の超人的な頭脳と感性を知っていたので、俺は手伝いは出来ないと断ったのだが、そのあとも、しつこく誘われ、仕方なく来ているというわけだ。
「ひーくん。 お待たせ、じゃあ早速いきましょうか」
「あぁ」
その後、蕾の家に初めて入ると、そこは女の子の部屋‥‥というわけではなく、殺風景な部屋だった。
あと、よく見ると機械類がとにかく多い。
「なんか、家というより、研究施設だな」
その後、蕾に色んな発明品を見せられることになった。