13 そうきますか
キッチンに来てから、30分が経ち、そろそろご飯もほぼ完成というところで、余裕があった私は、リビングにいる二人をコソッと、覗いてみることにした。
「‥‥が‥‥なんだ!」
「‥‥‥‥ですか」
ん~余り聞こえないなぁ~。
でも由南ちゃんの顔はこちらからは後ろを向いてて分からないが、兄はとても楽しそうだ。
これはいい感じなのではないだろうか!
しかし気になるなぁ~。
もうちょっと近づいてもバレないかな?
そう思い私は二人に少し近づいて、聞き耳を立てる。
「本当に奈留は何処か抜けてることがあってね」
「そうなんですか‥‥」
え?
「兄としては心配でさ」
「はぁ」
由南ちゃんとの会話でなんで私の話をチョイスしたんだ!
もうちょっとなんかあっただろう!
あと、由南ちゃんなんか返事するの疲れてきてるよね?
「兄さん!」
「お、奈留。 晩御飯できたか?」
「うん、出来たよ! ってそうじゃなくて!」
「ん? どうしたんだ奈留?」
私は兄さんを引っ張り、由南ちゃんから距離を少し取り、小声で喋った。
「‥‥なんで、私の話なんてしてるの! もっと他に話すことなんていくらでもあるでしょ!」
「もしかして恥ずかしがってるのかー? 可愛いやつめ」
「そうじゃないよ! もっとこう‥‥‥‥何でもない!」
あまり無理矢理過ぎても逆効果になってしまいそうだったので、私は何も言えなくなってしまった。
やっぱり二人にするだけじゃ発展なんてするわけないよね。
考えが甘かったかもしれないなぁ。
「ごめんね、由南ちゃん。 兄の相手させちゃって」
「え? 別に楽しかったし謝ることなんてないよ」
由南ちゃん優しいなぁ。
あんなつまらない話をしていて、楽しいだなんて、いい子すぎないか!
「奈留、ご飯にしよう。 お腹が空いた」
「でもまだ森田さん帰ってきてないし」
「奈留、ご飯にしよう。 お腹が空いた」
同じ言葉を繰り返すなんて何処の村人ですか貴方は。
もっと広葉を大切にしてやれよ、あんなのだけど‥‥。
丁度その時、玄関の方で音が聞こえた。
広葉が、帰ってきたようだ。
「陸~、奈留ちゃん~。 俺の飯は~」
「ない!」
「なん‥‥だと‥‥!?」
「いや、ありますから、まだ食べてませんし。 兄さんもふざけてないで、テーブルに持ってくるの手伝ってください」
本当にコイツらが揃うと騒がしいな。
まぁこれそこが、私が前世に欲したものなんだろうけどね‥‥。
◆◇◆◇◆◇
「今日はありがとう。 何だか久々に楽しかった」
「由南ちゃん、それってつまり私といるときは楽しくないと‥‥?」
「そうね」
ひどい!
「ちょっと泣いてきていい?」
「冗談よ。 それじゃあまた誘ってね」
「うん。 それじゃあ兄さん。 ちゃんと送っていってあげてくださいね!」
由南ちゃんをきちんと護衛しなさいと、釘を指しておいたから、大丈夫だとは思うが‥‥。
「あぁ、じゃあ行こっか由南ちゃん」
「はい」
こういう二人の時間を少しずつ作っていけるように頑張ろう!
やっぱり恋愛も積み重ねが大事だしね。
出来れば私の話は出来ればしないでほしいなぁ‥‥するんだろうなぁ。 兄さんだし。
兄さん達が出ていくと、広葉も帰るようで、靴を履いている最中だった。
「じゃあ俺も帰るよ。 奈留ちゃんまたご飯食べに来るよ」
これで、いいですよと言ってしまうと毎日来そうな気がする。
「もう来ないでください」
「またまた、そういう照れ隠しも可愛いね♪」
くたばれ!
「照れてないですから」
「じゃあそういうことにしておこっと。 じゃあね!」
そう言って広葉は帰っていった。
そういうこともなにもないと思うが‥‥。
はぁ~何だか今日はどっと疲れたな。 主に兄と広葉のせいだが‥‥。
でもまた今日みたいに遊べたらいいな。
そう思いながら、私はリビングに戻った。