136 詩唖先生の秘密
「今回のことを話すにおいて、私の色々秘密を打ち掛けないといけないことになるんだが、まずは、ひとつ言っておく‥‥」
「まず?」
なんだろう、一体。
「‥‥私はお前が夕闇陸であるということを知っている」
予想を全くしていなかったところを言われ、私は驚き戸惑っていた。
「詩唖先生が‥‥どうしてそれを‥‥。 まさか、詩唖先生も転生を」
今から考えたら、前世とはあまりにも性格が違っていた。
それはただ、学年がずれると、もしかしたらあるのかもと思っていたが、私と同じように転生していたからなのか。
「いや‥‥そうとも言えるし、違うとも言える。 私は自分の意思でこの場所にいるからな」
自分の‥‥意思?
「‥‥ということは、詩唖先生は私が前世と呼んでいる場所から、自分の力で、来たってことですか?」
「あぁ、そうだ。 今回のこともそれと少し関係している。 だから、あいつの行動のことを理解するには、まずはそこから知らないといけないから。 少し長くなるかもしれない」
私の場合は、いきなりこの世界に赤ちゃんの状態で目覚めたから、もう神様が転生させてくれた、と思うしかなかったが、まさかそんなことができるなんて。
できることも驚きだが、前世のことを知っている人がこんな身近にいたなんて、それも驚き‥‥‥‥いや少し前に信くんと、この事について話していた。
他にもいるかもしれないって、いう情報はいくつかあった。
待てよ‥‥もしかしたら、詩唖先生が‥‥。
「先生、話が脱線しますけど、聞いていいですか?」
花さんが何故あんなことをしたのかとか、詩唖先生のこととかもっと知りたいことはあるけど、それより気になることがある。
「なんだ?」
「森田広葉に助言をしたのは貴方ですか、詩唖先生?」
詩唖先生は少し黙って、何かを考えると、その後、ゆっくり話始めた。
「‥‥あいつは口が軽いから、簡単に言っちまったみたいだな。 そうだよ、私が言った」
じゃあ本当に詩唖先生が‥‥。
そうなるとわからないことがいくつかある。
何故、私の正体を広葉だけに教えたのか。
蕾ちゃんに関わるなといったのは何なのか。
あと、信くんにたいしての謎の電話。
「なんで、森田さんに、そんな助言をしたんですか?」
「色んな理由はあるが、危なっかしかったからかな。 元男を好きなったりとかな‥‥結果、無意味だったことに変わりはないがな。 まぁ、あいつが選んだことだ」
そういえばそうだ。
私のことを知っても、態度は変わらなかったし、蕾ちゃんのことも受け入れていた。
「森田さんらしいですよね」
「あぁ、諦めないところとかな。 本当に楽な生き方をしないやつだよ」
えぇ、本当に‥‥。
そういえば、色んなってことは、他にも理由があるんだよね?
「他にも理由があるんですよね? それって何なんですか?」
そう質問すると、詩唖先生は何かを考えるように下を向き、黙った。
少しして、顔を上げた詩唖先生は何だか優しげな表情で、懐かしい雰囲気を感じた。
‥‥懐かしい?
「”俺”自身とはいえ、もう”俺”じゃないやつに”俺”の親友は渡したくはないだろ?」
え?
「それって、どういう‥‥」
「相変わらず鈍感だな”陸”。 俺はお前の親友だったはずだろ?」
‥‥‥‥うそ。
「こう‥‥よう?」