134 暗い公園での出来事
公園の真ん中の辺り、回りに花さん以外の人の気配はない。
私は今、何が起こっているのか、本当に花さんが言ったのか、何も考えることができず、一瞬、頭の中が真っ白になっていた。
「なん‥‥て‥‥」
「‥‥だから、死んでくれない?」
まだ、三度しか出会ったことのない花さんが、どうして私にそんなことを言うのか、私にはどうしても理解出来なかった。
「なんで‥‥。 なんでですか。 そんな突然!」
「そうね、あなたからしたら急なことね。 でも、こうする必要があるの」
そんな感じ、今まで全くなかったのに。
「‥‥どうしてか理由を聞いてもいいですか?」
隙を見て、逃げるにしても理由ぐらいは聞いておきたい。
「必要なことだから、としか言えない」
「なんですか‥‥それ‥‥」
訳がわからない。
でも、仕方がない‥‥もう逃げよう。
「残念ながら逃がすつもりはない」
‥‥え‥‥‥‥包丁‥‥!?
花さんの手には包丁が握られており、それを見てしまった私は前世の死んだときの痛みと恐怖を思い出した。
本気なんだ、この人。
逃げなきゃ‥‥でも体が!
「‥‥ぁ‥‥ぁ」
「やっぱり、包丁は苦手なんだ‥‥。 そこまでとは予想外だけど、やりやすくなったわ。 ‥‥チッ、でも誰も来ないなんて失敗かしら」
なんで、私が包丁が苦手って知って‥‥。
もう駄目‥‥誰か‥‥助けて‥‥。
「おい!」
え‥‥詩唖‥‥先生?
声のする先には、走ってくる詩唖先生がいた。
私は、恐怖か極限の緊張感かはわからないが、そこで、プツンと意識を失ってしまった。
◇◆◇◆◇◆
私が目覚めたとき、そこは見知らぬ天井があった。
体を起こすと、知らない部屋のベッドの上で寝ていたようだ。
あれ‥‥私どうして‥‥。
‥‥あ、さっきまで花さんと公園にいて、私‥‥‥‥!?
花さんに殺されそうになって!
いや、でも今、私は生きてる。
詩唖先生が助けてくれたってこと?
じゃあここは詩唖先生の家なのかな?
「起きたか」
「し、詩唖先生!」
いつの間にか部屋にいた詩唖先生は、いつもと違って部屋着なのかまた少し印象が違った。
「大丈夫か? 体調とか悪くないか?」
「は、はい。 大丈夫です」
そう言いつつ、詩唖先生は私の顔をじっと見て、特に何もなかったのか少ししたらほっとした様子で、普通に戻った。
「それなら良いんだけどな」
「あの‥‥私どうやってここに」
「あぁ、あのあと公園で気絶したお前を私の家まで連れ帰って来た」
詩唖先生が抱えて、連れ帰ってくれたのだろうか。
何だか申し訳ないな‥‥。
「ありがとうごさいます」
「それで、突然だが、お前に話しておきたいことがあるんだが」
え? 何だろう急に。
「あのや「あ、もう起きたんだ。 早かったわね」」
いきなりドアが開いたかと思ったら、そのドアを開けた人物を目にして、私は驚愕した。
そこには、私を先ほど、殺そうとした花さんがいたのだから。




