123 共通の出来事
図書室に戻った私たちは、さきほどまで、図書室に新しく入った本を静かに読んで、たまに感想を言い合ったりしていた。
だが、今は信くんが本そっちのけで、何かを考えているみたいで黙ってしまった。
その姿はさながら、ロダンの考える人のよう‥‥。
な、なにか悩みでもあるのかな?
やっぱり転生者って言わない方がよかったって後悔してるわけじゃないよね!?
「でも謎なんだよね」
「急にどうしたの?」
謎? やっぱり本のこと考えていたのかな?
「奈留さんはなかったかもしれないけど、少し前に前世の僕のことを知っている人がいたんだよ」
それって、もう一人前世の人がいるってこと?
いや待てよ‥‥それって‥‥。
「私も知ってる‥‥かも?」
「え、本当に? 僕の場合は電話だったからどんな人とかはわからなくてさ。 でも何かあるんじゃないかと思って」
そういえば、今までは前世に関わる謎なことも一人で考えないといけなかったが、これからは信くんと相談できるんだ!
それだけで信くんが転生者だって知れて良かった!
「電話ってことは声で‥‥いや変えていたらわからないか。 私も存在は知ってはいるんだけど、手がかりがないんだよね。 知ってる人はいても、この事になると何故か相手にしてくれないし」
「へぇ、知ってる人って?」
「森田さんだよ」
「‥‥話してくれそうな人なのに話さないなんてよっぽどだね」
そうなのだ、今まで聞いたことを答えてくれないなんてなかったから、私も驚いている。
「一番、隠し事が出来なさそうなのに、正直ビックリしちゃったよ」
「でも、奈留さんに話さないってことは、たぶん他の人にも何も話してないだろうね」
まぁ気になる人も私ぐらいなものだしね。
「そうだろうね。 だから今回、森田さんに聞いても、たぶんダメかな。 そういえば、信くんは何かその謎の人のとこで、何か知っていることはないの?」
「正直、電話を少ししただけだし、ヒントはあまり隠れてないかな」
「どんな話をしていたの?」
「え!? いや、一般的な日常会話だよ!」
え? 謎の人と日常会話!?
いやいや、そんな馬鹿な。
「えー本当に?」
「まぁ、後は‥‥前世のこととかも話したよ。 だから僕のことを知っている人、すなわち転生者がいるかもってことなんだ」
なるほど。
前世の信くんを知っている人、まぁ転生していなければ普通は無理だもんね。
広葉の他にも信くんにも関わっている人、同一人物なのか、それとも別の人なのか、さっぱりわからない。
だけど、何にしても証拠がない。
「何か色んなことを知ってるかもしれないし、一度会ってみたいなぁ」
「でも、これだけ接触してきてるのに、全く誰かわからないっていうのは、かなり情報を遮断してるってことになるのかな? これは探すとなると大変そうだね」
「じゃあ、少しでも何かわかったら、すぐに信くんに連絡するね」
たぶん一人だと、どうすることもできないので。
「僕もわかったら、連絡するよ」
こうして、私たちは協力することを約束した。




