121 ただ、私が聞きたいこと
そうと決まれば、急いで信くんのところに行かないとね。
何処にいるんだろう。
クラスの男の子なら知ってるかな?
「ねぇ、磨北信くん何処にいるか知らない?」
「え!? 女神さ‥‥いえ、夕闇さん。 磨北ですか? アイツなら確か図書室に行くって言ってましたけど」
一瞬、理解できない単語が混じっていたが、たぶん聞き間違いだろう。
それより、図書室か。
「わかった。 ありがと!」
「磨北に何か用事ですか?」
「うん、大事な話をしにね」
「だ、大事な話!?」
すごい驚いてる‥‥どうしたのかな?
「あーあ、あれ絶対、勘違いされてるよ」
遠くで由南ちゃんは頭を抱えていた。
え? 何?
何か言っているみたいだけど、離れていて、私には聞こえない。
まぁいいや、図書室行かなくちゃ!
◇◆◇◆◇◆
図書室に行くと、信くんは一人で、本を読んでいた。
「信くん!」
「ん? あ、奈留さん」
あ、見つかったことが嬉しくて、ちょっと声出しすぎた。
私はまわりの人に軽く謝罪し、信くんの正面の椅子に座った。
「信くん」
「どうしたの?」
「‥‥何読んでるの?」
あー違う、そうじゃない。
今日は聞きたいことがあって来たのに。
「あぁ、これ? 図書室に新しく入った本みたいでさ。 これが面白くって。 奈留さんも後で読んでみて。 いい本だし気に入ると思う」
「そ、そうなんだ‥‥あはは」
改めて言おうとすると、何だか言い出しにくい!
そ、そうだ。 まず距離を取っていたことを謝らなければ。
「どうしたの? 奈留さん」
「えっと‥‥あの‥‥ごめんなさい!」
「え、何に対して?」
あれ? 気づいてない?
「私が少し、距離を取っていたのに対して?」
「え!? そんな距離取ってた?」
気づいてなかったー!
信くんは大声を出したことによりまわりの皆様に謝罪をしながら、私の方を向いた。
「き、気づいてなかった?」
「いやだって、いつもは正直、男女にしては近い距離感だったし、ようやく落ち着いて、普通になったと思ってた」
ま、まさかあれが近い距離感だったなんて‥‥。
男友達相手なら普通だと思うんだけど。
「じゃあ私がただ、そう思い込んでただけ? はぁ、何だか損した気分だよ」
「あはは、でも何だか懐かしいな。 奈留さんの家に遊びにいったとき、同じように謝られたし。 奈留さんは謝るのが好きみたいだね」
「そ、そうじゃないよ。 ただ、私がダメなことだと思ったら謝ろうって思ってるだけで」
前世から決めていることだしね。
「やっぱり、優しいね。 奈留さんは」
「もう、そんなんじゃないって!」
あ、また大きな声出しちゃった。
また頭を下げる私‥‥‥‥やっぱり私謝るのが好きなのかも?
「ちょっと別の場所に移動しようか」
「そ、そうだね」
もう、遅いかもしれないが、まわりの人の迷惑にならないように、図書室を出ていった。
◇◆◇◆◇◆
「それで、本のこと以外で僕に用あったりする?」
いいタイミングで信くんが話を降ってくれた。
信くんが物事を察してくれる人で良かった~。
「うん、ちょっと聞きたいことがあってね」
よし、いい感じの空気だし、このまま聞いちゃおう。
「あ、僕もひとつ聞いておきたいことがあるんだ」
え、信くんも?
私に聞きたいことってなんだろう。
何だかそっちの方が気になるな。
「信くん、先に言っていいよ?」
「わかった、それじゃあ‥‥‥‥奈留さんって”転生者”なのかな?」
え‥‥‥‥えぇ!?
何で知ってるの!?




