119 その後、私は‥‥
後半から磨北信くん視点です。
は、恥ずかしい~!
なんで、抱き締めたりしちゃったんだろ!?
何だか、とっさにそうしちゃいたい気分になってしまったからだけど、今になって恥ずかしくなってきた。
「あ、えっと、その‥‥ごめんね、急に抱き締めたりして」
「どうして、奈留ちゃんが謝るの? 私、感謝しかない‥‥それに嬉しかった」
「え?」
う、嬉しい?
いやいや、元男にいきなり抱き締められて、嬉しいはずが‥‥。
「もし、お姉さんがいたらこんな感じなのかなぁ~って。 優しく許してくれて。 それに‥‥ようやく皆みたいに、ちゃんって呼んでくれた」
そういえば、いつもは賢いし、なんでもできるイメージがあったから何だか、さんをつけていたが、あの時は何だか妹みたいな、そんな守ってあげたいような感じがした。
だからちゃんって言ったのかもしれない。
「あはは‥‥でも、ちゃんと元気出してくれて良かった」
「‥‥うん、もう大丈夫っす。 原因解明と、もう同じ失敗は起きないように今から家に戻って作業するっす!」
「え、今から!? 授業は!」
「早退するっす~」
そういって、蕾ちゃんは飛び出していった。
驚いた気持ちもあったが、いつもの明るい蕾ちゃんで、安心した気持ちが大きかった。
「何だか嵐のようだったね」
「それでこそ蕾ちゃんだけどね」
そういえば、今思ったが、あの休日に見た夢はもしかしたら、その装置のせいだったのかもしれないな。
そう思うと、蕾ちゃんに感謝すると同時に、やっぱり蕾ちゃんって凄いんだなぁって改めて思った。
「そういえば、奈留さん、さっき僕に何か言おうとしてなかった?」
「あれ? そうだったっけ‥‥‥‥ごめん、さっきのが衝撃的すぎて忘れちゃったみたい」
何言おうとしてたいんだっけ?
大事な事だったはずなんだけど‥‥。
う~ん、思い出せない‥‥‥‥やっぱりもう一回装置、接続してもらってもいいですか! と思わずにはいられなかった。
うぅ~、もやもやする~!
◇◆◇◆◇◆
「今日は驚いたな‥‥」
今日は両親の帰りが遅いそうで、私が晩御飯を作っていた。
その時、作りながらなんとなく今日は学校のことを考えていた。
蔭道さんのこともそうだけど、まさか、奈留さんがいきなり転生について聞いてくるんだから。
でも、あんなにごまかす必要はなかったよなぁ。
奈留さんも軽い話題のつもりで話してきたんだろうし。
‥‥いや、でも普通に生活していたら、転生なんて話題になるのか?
‥‥まさか、奈留さんは何か関係しているのかな。
あの謎の電話の相手と奈留さんが?
いや、無いとは言えないが、奈留さんの性格からして、可能性は低いと思う。
でも、奈留さん自身が転生者って可能性もあるよね。
前世で、聞いた話とは明らかに別人になってるし。
ただ、この世界は違うってだけなのかもしれないが。
「一体どうなってるんだ‥‥」
謎が多くなるばかりだ。
「どうなってるって‥‥フライパンの中身が焦げてるね」
え、きさねぇ‥‥ってうわぁ!
「いつの間に!」
「も~信くん、料理中にボーとするのはいけないんだよ。 料理しない私がいうのもなんだけど」
「なんか‥‥ごめん」
その後、焦げたものはきちんと自分で食べておきました。
うぅ、不味い‥‥。




