113 本の謎
「そういえば、奈留。 朝から何の本を読んでるんだ?」
「ん? あぁ、これ? 図書室に新しく入ったから読んでみようと思って。 信くんも好きらしいしね」
まぁ、今朝の夢からすると初めは祈実さんに教えてもらったことになるんだけど、そんなこと兄さんに言えないしね。
そもそも、今世の祈実さん本あまり読まないし!
そういえば、前世に祈実さんがこの本を好きだったのはもしかしたら前世の信くんが勧めたのかもしれない。
あれ‥‥なんか違和感が。
「へぇ、磨北弟がねぇ。 まぁ本に罪はないからなにも言わんが」
なにその含みのある言い方は!
兄さん信くんのことあまり好きじゃないのかな?
「まぁ少し暗い話ではあるけど、面白いよ。 兄さんも後で読む?」
蕾さんには月曜に渡すつもりだし、私もそこまで時間はかからないと思うし。
「いや、俺はいい。 本はあまり読まないの奈留も知ってるだろ?」
「それはそうだけど」
兄さんはあまり、本は好きじゃない。
私が好きになったきっかけが、今世の兄さんにはないから当然なのかもしれないが。
「ただし、漫画ならいくらでも持ってきてくれ!」
「変わらないね~兄さんは」
ふぅ、じゃあ洗い物した後に読むの再開しようかな。
◇◆◇◆◇◆
読もうと、しおりを挟んでいるところを開く。
もう読んでいないページの方が少なくなっていた。
「もうそろそろ終わりかな」
本はもう少しゆっくり読んだ方がいいんだろうけど、続きが気になると早く読もうと思っちゃうよね。
まぁいいや、読もう。
何度も夢と死後の世界を繋いで、兄の手がかりを見つけた妹は、そのあと二、三回、繋ぐことによってようやく兄を見つけることに成功する。
そして、兄と妹は‥‥‥‥。
◇◆◇◆◇◆
「まさかあんな結末なんて‥‥」
読み終わった私は、何だか少し落ち込んだ。
予想してなかったわけではないけど、結局妹の方も死んじゃうなんて。
読み始めて、そうかなとは思っていたけど、やっぱりハッピーエンドにはなってくれないんだね。
いや、妹は兄に会えたということでその時は嬉しそうだったが、それ以外は‥‥やっぱり読書の視点から言えば違うかな。
それに、題名にもあったが、楽園とは結局何のことだったのだろう。
特になにか書かれている訳じゃなかったし。
怪しい人物といい、謎が多い終わり方だったな。
結局、この違和感が何なのか分からず終いだったし。
最後まで読んでみるとやっぱり、祈実さんが好きだとは思えないような話だった。
祈実さんはどんなところが好きだったんだろう‥‥それも聞いているはずなんだけどな。
信くんも好きだって言ってたよね。
今度また聞いてみようかな?




