105 気まずい‥‥
学校が終わりに食材を買うため、由南ちゃんと別れた後、私はスーパーに買い物をした。
スーパーのまわりにはさすが商業地域と言うべきか、色んな店がある。
私は何となく今日は真っ直ぐ帰るのではなく、色んなところを見ながら帰ることにした。
まさか、そのせいというべきか、そのお陰というべきか、小乃羽ちゃんと兄さんの二人きりの現場に偶然遭遇してしまうとは‥‥。
「お兄様、ここのケーキおいしいです!」
「そうだね、やっぱり旨い」
兄さん達はケーキ屋さんのテラス席でケーキを食べていた。
うわぁ、美味しそう、私も食べたい‥‥ってそうじゃなくて、どうしよう‥‥。
いや、別にそのまま立ち去ればいいだけの話なのだが、予想以上に気づくのが遅れたせいで、近くまできて隠れてしまった。
普通の人なら気づかれることはないだろうが、あの兄さんである。
気づかれてしまう可能性は大いにある。
しかし、こんなことで邪魔をするわけにはいかない!
ということで、私はずっと隠れている作戦をとったわけだが。
「これは‥‥不味い」
あ、別にケーキが不味いって言ってる訳じゃなくて、この状況が不味い。
今思えば、付き合っているのは、もちろん知っている。
初めてのデートも見た。
しかし、それ以外で兄さんと小乃羽ちゃんが一緒にいるところを見るのは今日が初めてである。
まぁ、それだけ聞くと何ら問題ないような気がしないこともないが‥‥考えてもみてほしい、兄のイチャイチャしているところを見せられて、そのあと普通に接することが出来るだろうか。
一般的には出来るかもしれないが、私には出来ない!
なんだか秘密を見ちゃったみたいで気まずい‥‥。
前のデートの時はちゃんと兄さんにも見てるってことを言っていたからなんかあまりそんな感情はなかったんだけど、二人ともに言ってない今回はもしものことが‥‥。
まぁそれでも、気になるので見ちゃってるんだが。
いや、でもあの二人、まだキスとかしてないって言ってたな‥‥。
「なんだ、それなら安心だ!」
「あれ? 御姉様?」
バレちゃった───!?
◇◆◇◆◇◆
き、気まずい‥‥。
いや、私だけ気まずいだけで、二人は楽しそうなんだけど。
いつの間にか同じ席に座らされていた私は先程から愛想笑いをしている。
「御姉様、居るなら声をかけてくださればよかったのに」
「あはは‥‥気付かなかったんだよ」
ここは嘘をついてでも、さっきまで隠れていたことを隠さなければ!
なんかよくわからないけど、さらに気まずくならないように!
「奈留は買い物の帰りだったみたいだな。 重たそうだし、荷物は俺が持って帰るよ」
そんな気遣いは今は必要ないですよ!
なんでこういうときだけ気が利いてしまうんだ、兄さんは‥‥。
「御姉様、御姉様! ここのケーキとても美味しいんですよ。 御姉様も食べてみてください!」
すると、小乃羽ちゃんは私にケーキを食べさせようとフォークを私の口元に持ってくる。
これってまさか、アーンってやつじゃないですか?
「え‥‥ん、あむっ‥‥‥‥もくもく」
いやこんな嬉し恥ずかしがあっていいのか、ケーキうま!?
何ここのケーキ、とても美味しい!
「どうです?」
「ん、凄く美味しいよ!」
「そうですよね! お兄様がおしえてくれたんです」
え、兄さんが?
このお店、私は食べたことないけど、兄さんは食べたことあったのかな?
「少し前に広葉と来たことがあってな」
このおしゃれなお店に、広葉と兄さんの二人で?
というか本当に、たまに仲が良すぎることがあるね!
「へぇ、森田さんと‥‥」
「あぁ、なんかこういう所に行くと、大人になったみたいでかっこいいとか何とか」
あ、そういう理由ですか、何となく分からないことはないけど、いつも通りということですね。
「なんだか、森田先輩らしいですね」
もう、小乃羽ちゃんにもそういう印象を持たれてるなんて、さすが広葉だな。




