103 その朝は
今日も私は気持ちのいい朝を迎えた。
昨日の休みに祈実さん達と遊んだのだが、あの後も祈実さんがまた戻ってきたり、色々あって賑やかな休日だった。
「今度は旅行に行ってお泊まりでも楽しいだろうなぁ」
兄さんは反対しそうだけどね。
まぁいいや、朝食作らなくっちゃ。
「奈留~おはよぅ~」
あれ? 兄さんが自分から起きるって珍しいですね。
まだ、朝食作ってる最中ですし。
何か悪い夢とか見たんでしょうか?
「どうしたんですか!? 兄さんが自分から起きてくるなんて!」
「俺が自分で起きるのってそんなに珍しい?」
「はい!」
「そんな力強く!?」
えぇ、起きてるはずなのに、ベッドから出てこないとか何度もありましたし。
「でもどうしたんですか? 今日早く行く予定でも?」
「いや、偶然起きただけだよ。 まぁ朝から奈留のエプロン姿を見るためだな」
あ、いつもの兄さんでした。
ちょっと心配して損しました。
「何ですかそれ。 まぁでも早く起きてくれたので、いつもより余裕をもって朝食を食べれますね。 すぐできますから少し待っててください」
「おう」
そのあと少し経ち、食卓に並ぶ。
まぁ特にいつもと変わらず、二人で少し世間話をしながら食べていく。
「結局、何時もより早いので暇ですね」
「あーまぁそう思うと、奈留が的確に起こしてくれる時間が一番ベストなんだなって思えてくるな」
「いやいや、自分でも起きる努力はしてくださいよ」
起こすからって安心して、全く起きないのは、起こす側からすると本当に大変ですから。
「‥‥うん。 あ、そうだ、こんなに早いんだし、広葉の家にいって驚かせてやろう!」
あ、逃げた。 というか玄関から出ていった。
学校にいくなら私も一緒に行きたかったのに‥‥。
というか、広葉の家に行くなら、小乃羽ちゃんの家に行けよ!
本当に兄さん達の仲の良さは底が知れないね。
◇◆◇◆◇◆
「それで、今日はお兄さんと一緒にいないのね」
「そうなんだよ。 急に出ていっちゃうし、ホント、たまに子供っぽいんだから」
「でも、その無邪気なところも、お兄様のいいところですよ♪」
私は今、登校している真っ最中で、由南ちゃんと小乃羽ちゃんの三人で歩いている。
一人で行こうとしていたのだが、偶然、由南ちゃんに出会い、その直後、小乃羽ちゃんとも出会った。
それでこうやって話ながら歩いているわけだが。
「小乃羽ちゃんは本当に兄さんのことが好きなんだね。 あれ? そういえば、小乃羽ちゃんが兄さんを好きになったきっかけって、聞いたことないな‥‥」
「言ったことありませんでしたか‥‥すみません、恥ずかしいので、ゆっくりお話しできるときにしますね」
「うん」
ぐっ、気になるが、ここはぐっとこらえて待とう。
「あ! 御姉様、灘実先輩。 私今日早く学校に行かないと行けないんでした!」
「え? そうなの? 呼び止めたりしてごめんね」
「いえ、さっきまで忘れてましたから。 では先輩方、また放課後部活で」
「えぇ、また部活で」
「じゃね、小乃羽ちゃん」
小乃羽ちゃんは走って行ってしまった。
間に合うといいんだけどなぁ。
「今の子可愛いっすね! 何ていう子なんっすか?」
「ん? 部活の後輩で福林小乃羽ちゃ‥‥え!? 蕾さん!」
いつの間にいたのか、まるで気がつかなかったが、横には蕾さんがいた。
「ちわっす、お二方。 今日もいい朝っすね」
「ビックリしたよ。 いるならすぐに声をかけてくれたらいいのに」
「ちょっと驚かせようと思ったんっすよ。 そのわりに由南ちゃん全然驚かなかったっすけど‥‥」
「福林さんといたときから、後ろから近づいてきてるのわかったし。 奈留が鈍感だから気付かなかっただけよ」
ひどい!
そりゃまぁ特に気にせず歩いているけど。
「それで、結局あの子誰なんっすか?」
「あぁ、部活の後輩で福林小乃羽さんよ。 後輩の中では仲がいいわね」
「それと! 兄さんの彼女さんでもあるんです! 勉強もスポーツも出来る完璧少女なのです!」
ここぞとばかりに私は自分のことのように自慢した。
本当にあんな優秀な子が慕ってくれるなんて、鼻高々ですよ。
「すごいっすね! へぇ、そんな天才みたいな子って存在するんっすね」
「「‥‥いやいやいや」」
「なんで、二人してそんな呆れたような顔するんっすか!」
だって、そりゃ‥‥ねぇ。
「自分がもっとあり得ない人間っていうのをちゃんと理解した方がいいわ」
「うんうん」
「なんかひどいっす!?」
最近色々なことがあったので、なんか蕾さんってそんな印象に思えてきた。
いや、そんなところを含めて、蕾さんといると楽しいんだけどね。




