102 そして、朝が来る‥‥
「はっ! やっぱり寝落ちしちゃった!」
いつも朝の早い私が一番早く起きたわけだけど、まわりには死体‥‥いえ、実際事件が起きたように見えなくもないけど、皆さんが寝ていた。
そして、私は目は覚めているのだが、体を起こせないでいた。
何故ならそれは‥‥。
「‥‥ん‥奈留‥‥すぅ‥‥すぅ‥‥」
由南ちゃんが、私の体をガッチリと掴んでいるから。
私は抱き枕か何かですかね!
しかも向きは完全に顔を合わせて寝ているので、えぇ、これはキスとかその前段階でしかあり得ない距離!
そうやって思うと、なんだか急にドキドキしてきた。
いやいや、落ち着け私! ここは深呼吸だ!
‥‥ふぅ、なんとか落ち着けた。
それでも、やっぱり動けないんだよねぇ。
でも、ここで起こすのはなんだか可哀想で嫌だな。
私が早いから起きているだけで、普通は寝てるはずだしね。
それにしても私、由南ちゃんの寝顔ってちゃんと見たの初めてだなぁ。
普段はしっかりしてるから綺麗だなぁと思うが、寝ているとなんだか可愛い!
こんなことってあまりないし、由南ちゃんのほっぺを触っておこう。
フニュフニュ
うおー! 柔らかい!
なんだこれは、とてつもなくハマる!
「奈留?」
お、起きてたー!
「はい、すみません! 調子乗ってました!」
これは怒られるパターンだよ。
「はは、何いきなり。 別に触るぐらいで怒ったりしないわよ。 それよりもおはよ、奈留」
お、怒られなかった‥‥。
「おはよう、由南ちゃん。 起きてたんだ」
「えぇ、起こされた。 目の前の人に」
「ごめんね、由南ちゃん」
「特に問題ないし、大丈夫よ。 それにしても距離が近いわね」
由南ちゃんも抱きついているのに気付いたようだ。
ふぅ、ようやくドキドキから解放される。
「じゃあ、そろそろ手を離してもらえると‥‥」
「残念ながらそれは無理ね。 私がまだ抱きつき足りない」
「もしかして、寝ぼけてる?」
「そうかもね。 ‥‥だからあと少しだけ」
それから三十分後、ようやく起きたわけだが、よく寝たはずなのに、なんだかとても疲れた。
対照的に由南ちゃんはとても元気そうだった。
◇◆◇◆◇◆
「よし、みんな起きたね!」
祈実さん、最後に起きたけど、凄くテンション高いね。
いや、最後だからかも?
「お前が最後なんだから当たり前だろうが」
「もう、そういうことは言わないの! まぁそれはいいや、じゃあ今日の予定を発表します!」
なんか本当に修学旅行みたいですね。
というか、帰らないんですね。 いや、別に帰ってほしい訳じゃないですが。
「帰らないのかよ!」
兄さんがこう言うだろうなぁ、と思ったので。
「ここまで来たら、一日も一日半も変わらないよ」
「それはお前が言う言葉じゃねーよ。 それ以前に何するんだよ」
「え? すごろく?」
いや、それ昨日全然終わらなかったやつ!
「やらねーから! 本当に何時間かけてこんな長いすごろく作ったんだよ」
「うーん、三十七時間?」
祈実さんってちゃんと学校いってる?
「す、凄いな。 それはそれとして、一度帰れ。 な!」
「きさねぇ、一度帰りましょうよ」
「仕方ないなぁ。 じゃあ一度帰るよ」
やっぱり、信くんの言うことはよく聞きますよね、祈実さん。
それと、なんだか、またすぐ来そうな気がするが、いいのだろうか。
「私も戻るわね。 泊めてくれてありがとね、奈留」
「うん、また来てね」
由南ちゃんならずっといて欲しいぐらいですとも!
こうして三人を玄関から見送り、それぞれに帰っていった。
まぁ楽しかったし、またあってもいいなぁ、と私はそう思った。
「あ、森田さん、お茶です」
「ありがとね、奈留ちゃん。 やっぱり朝は温かいお茶だよね~。 落ち着く」
「はは、おじさん臭いですよ森田さん」
はぁ、落ち着きますね。 いつも通りの家で‥‥ん?
「もうお前が家にいても違和感を感じなくなっていてなんか嫌だ! というか広葉、お前も帰れよ!」
はっ、そういえば!
違和感無さすぎて気付かなかった!?