101 いつの間にか
晩御飯を作る時間ですごろくは終わっているかと思ったが、全くそうではなく、何故かまたスタート地点に戻されていた。
あれ? 結構進んでなかったっけ?
「なんで中間にスタートに戻る置いたんだよ!」
「二回遊べてお得だね♪」
「そういうことじゃねーんだよ!」
いや、それもあるけど、なんで二人仲良く、その升に止まってるのさ!
あと、驚いたのが、ゴール手前までは来てるけど、ゴール出来てない由南ちゃん。
「奈留‥‥」
「由南ちゃん」
「奈留‥‥私の番、来ないの」
まさかの連続休み!?
ずっと相手のターン!
「あはは‥‥でもあの二人に比べたらまだ」
「そうね、私はそろそろゴール出来るもんね」
みんな結構苦戦してるみたいだね。
あ、広葉はゴールしたときに兄さんを煽って、今は気絶してます。
「こんなに終わらないなんて、運が悪いとかそういうことじゃなくなってきてるよね。 きさねぇ、わざとじゃないよね?」
「私だって勝ちたいんだよ~。 よし、信くん! 私に運を分けてくれ!」
そんな元気分けるみたいな感じで‥‥。
信くん若干呆れてない?
「はぁ、はいはい」
それでもこうやって、のってあげるところとか信くんの優しいところだよね。
「奈留、俺にも運を、いや愛情を‥‥」
「兄さんは他者に頼らずとも勝てるって信じてます♪」
「嬉しいけど、なんか悲しい!」
えぇ、私の運なんて、ないようなものだし。
ここは自力で頑張っていただこう。
というか、ごはんできてるけど食べないの‥‥?
◇◆◇◆◇◆
一度、晩御飯で休憩したのち、再開したすごろくでは、祈実さんが、早めにループを抜け出し、見事に先にゴールした。
信くんが運を分けてあげたおかげかなぁと暖かい目で見ていた。
まぁ兄さんはあとでちゃんと、励ましておこう。
「ということで、私は泊まれるってことでいいのかな?」
あ、そういえば、そういうゲームでしたね。
ビリ争いが長引きすぎて、忘れてましたよ。
兄さん拒否しそうだなぁ‥‥。
「あぁ、それでいいぞ。 実際もう時間も遅いから危ないしな。 帰すより泊まらせた方がいいだろう」
意外とあっさり。
そういうところで、相手のことを考える、そういう兄さんは本当に大好きです。
まぁ今回は何であんなに真剣になってたかよくわからないんですが‥‥。
「やったー! よし、じゃあ明日の朝まで何で遊ぶ?」
いや、朝までって‥‥。
完全に寝落ちするつもりじゃないですか。
それにそれって泊まるっていうよりは朝帰りみたいな感じだし‥‥。
「いや、俺はそんなに起きてるつもりはないから」
「えー、奈留ちゃんも?」
「残念ながら‥‥」
元々そんなに、夜更かし出来ないですし。
「もう、じゃあ遊ぶのはいいや、じゃあ寝る準備をしよう!」
「え? もうですか?」
まだ結構寝るには早い時間だけど?
「修学旅行とかである、寝る前とかに話したりするのを今の皆でしてみたいんだ♪」
目をキラキラさせながらいう、祈実さん。
これはこれで、長くなりそうだな‥‥。
◇◆◇◆◇◆
身支度を済ませた私たちはリビングに集まった。
お風呂にまたしても一緒に入ろうという案がでたが、時間が早かったこともあり、一人ずつ入ることに成功した。
兄さんと広葉はなんだか残念そうだったが、そもそも一緒になってたとしても、男女は別だからな!
それにしても、信くんも私と同じで反対してくれて、助かったよ~。
やっぱり、いい人だぁ。
それで、色々な話をするために集まったわけだが、一体どんな話するのかな? 少し、ワクワクする!
「じゃあどんな話しよっか?」
「ここは怪談話でしょ!」
「お、広葉くんいいこというねぇ」
うわー、広葉なんてこといってくれてんだコラー!
普通ならあんまり怖くないことも、話上手な祈実さんなら怖くしちゃうに決まってるよ!
「じゃあいくよ~!」
祈実さんの話は学校の怪談話だったのだが、生徒が次々と消えていく、という内容だった。
それなら似たような話は多くあると思うが、しゃべっているのが祈実さんである、とてつもなく怖い!
「‥‥すると、その女の子の後ろには包ち───」
すると、いきなり、由南ちゃんが私の耳をスッとふさいだ。
え? 何々!?
「怖いなら聞かない方がいいわ」
由南ちゃんを見るとそう言っているような気がした。
ここまで聞いたら聞きたいっていう、思いがあったんだけどな。
でもまぁ、いっか。
あぁ、でも、なんだか暖かくて安心する。
あれ‥‥段々眠くなってきちゃった‥‥。




