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四大精霊の愛し子 ~自慢の家族はドラゴン・テディベア・もふもふ犬!~  作者: 羽廣乃栄 Hanehiro Noë
朝焼けの街 (カハルサーレ)

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22. お洒落な色を学ぶ


≪この街の名は『朝焼けの街』という意味じゃ≫


≪あー、確かに。壁の色とか、石畳の色とか赤っぽい≫


≪神殿から見て朝日の昇る東側、という意味もある。実際には北東じゃが≫


 ぼつぼつと見かけるようになった街の人々の様子を観察していると、爺様が挽回(ばんかい)してきた。神殿の怪しげな連中や爺様の死体や駆け落ちカップルから覚悟はしていたが、見事に高身長の白色人種オンリーだ。


 まぁ、私のモヤシ肌もさっきの女性に近い、黄色がかった白人肌で誤魔化せそう。|典型的東洋人イメージの《パリコレ・モデルみたいな》キュッとした()り目でもないし、じっくり見られなければそこまで奇抜ではないはず!


 タヌキ顔バンザイ! と自分を励まし(?)ながら大通りの端っこを、なるべく自然に步む。


 やっぱり髪は、月の四色が人気。黒髪はいなかった。でも南の帝都にはいるんだよね? 髪だけじゃなく、服やインテリアに至るまで、黒やメタリック調が最先端の流行だって説明受けたし。う~、怖気づくな、魔王メメ!


 幸い王都に近いからか、私のような帝国(ヘビメタ)風(?)の髪をした余所者が歩いていても関心を持たれなかった。自分のことで一杯一杯なのかな……帽子や頭巾を目深に被って表情も変えず、目も合わさずに急いで行き交う。


≪もうすぐ極寒の冬じゃ。今日は奇跡的に晴れたが、先のことを考えると気も滅入ろう。地震で倒壊したという正門側も元から手抜き工事かもしれぬ。ここ一帯の領主はロクでもないからな≫


 と爺様が嘆くけど、私にはよく解らない。こんなにキラキラきれいな秋晴れの日くらいは楽しもうよ。


≪これから急速に日照時間が減少する。真昼でも空は晴れんし、冬となれば吹雪で外にも出れん≫


 あー、冬(うつ)ってやつだ。そっか、北欧なんかで問題になっている。日の光が足りないと、ビタミンDが生成されなくなってしまう。


 ――やだな、真冬までに青い馬の連峰に辿(たど)り着けるか、私まで不安になってきたよ。慌てて首をぶるぶる振って、迷いを吹きとばす。


 そんな沈んだ表情とは裏腹に、皆のまとった布は染色技術の高さを(うかが)わせた。四つの月の色のどれかで見事なグラデーション。深みや渋みのある色合いもあれば、淡い色合いもクリーム系もあって千差万別だ。

 おまけに刺繍(ししゅう)だったり織柄だったりで、何かしら工夫している。花鳥風月の写実的なモチーフはアクセントに少しだけ。アイヌ文様やケルトの結び目みたいな幾何学模様が主流だ。


 男性陣はゆったりした長ズボン。立て襟の長袖チュニックの裾はズボンに入れずに出して、組み(ひも)や革で編んだベルトで結んでいた。


 女性陣も立て襟で長袖。ただし、男性のチュニックよりも薄手のふんわりした布だ。その上に、もう少し厚手の生地で仕立てた別の袖なしワンピースを重ね、(きら)びやかな布帯数本を腰元で結ぶ。

 クリノリンだのパニエだのといった不自然なスカート部分の膨らませ方はしていない。


  全体的に洋服っぽいのに、腰帯のお洒落(しゃれ)を最もこだわる感性は、日本人の着物に通じるところがある。帯留めみたいな装飾品まで付けて、変わり結びにする人が複数いるし。


 黒髪かつ黒無地の上下に、濃紺のコートとリュックという出で立ちの私は、地味魔王すぎて逆に目立つ。道行く人が、誰にでも話しかけてくる陽気なラテン気質じゃなくて、ホントに助かった。


 帝国人が布地を上下ともに真っ黒や焦げ茶や紺色で統一するのは、全身じゃらじゃらつけた派手な偽造宝石を際立たせるためなんだって。

 でも爺様の本物の宝石でそれをやったら、盗賊ホイホイになっちゃう。後で質屋に小さな宝石を持っていくのだって、怖いんだよ。


 せめて昨日の水茸(みずたけ)を採取しておけばよかったかな。(きつね)の尻尾みたく腰に垂らせたのに。




 あれこれと悩みながらもカチューシャの後をついて、中央広場に到達。

 昨夜みたいに、四つの月が遠のく翌日は市が立つ。(のみ)の市や金物市など、週によって、街によって様々。陶器ばかり並ぶような市だったらどうしようかと不安だったけど、ちゃんとご飯系の屋台も出てる!


 しかも売り手側には、私みたいに全身無地の人がやっといた。ほとんど黒な紫とか、黄色の線の入った焦げ茶とか、暗めの服の人もチラホラ。赤い光沢の黒生地という、不思議な布もある。タイシルクっぽいから厚みのある絹なのかな。

 大きな宝石のブローチを付けているから、あれが『帝国風』なんだわ。メタリックなネックレスやブレスレットも重ね掛けしてる。


≪ふむ。王都から売りに来ておるようじゃの≫


 帝国からじゃないの? と質問したら、こんな場所で帝国人が行商するわけない、と爺様に断言されてしまう。


≪あいつら、自分たちよりも南側の国はほぼ全て属国にしちゃったから、すっごく横柄なのよ。独立を保っているこの国まで、田舎のいち地方扱いしてくるんだもの≫


 カチューシャもご機嫌斜めだ。都会ネズミ組って、そこそこ愛国心があるよね。


 屋台には色とりどりの野菜が並べられていた。隣の店には、果物が所狭しと積み上げられている。

 赤とか黄色はいいとして。赤紫じゃなくて青紫色の玉葱(たまねぎ)、赤ワイン漬けでもないのに薄紫色した生の洋梨、といった初めて見る紫系がそこここにあるし、なんと青系のも結構ある。水色の人参とか、濃いターコイズブルーの林檎(りんご)とか。……やっぱり異世界だ。


 これまで地球で食用にしそうな野草を見つけては、靴下に挟んで実験してきた。幸い、まだ肌荒れはない。だから未知の色味でも、なんとか受け付けてくれるんじゃないかな、私の肉体。


 果物をじっくり品定めしようと近づいた。店主らしき赤ら顔の中年女性は、フラミンゴみたいなポッコリお尻と長い首。他の女性同様、大判スカーフを頭全体に巻いている。

 そいでもって振り返った瞬間、ちらりと(のぞ)いた前髪が根元まで濃いピンク(マゼンダ)色と薄ピンク色のまだら! なんと髪までフラミンゴ!


≪ってぇ、睫毛(まつげ)も眉毛も化粧品で塗った感じじゃなくて、ナチュラルにピンク! しかも白髪まで混じっている! 染めの技術、すごくない?!≫


 さっきのカップルは若いし、世紀末ファッションなんだと思い込んでた。でもこのおばさんからロックンロール臭はしない。湖水地方で(うさぎ)と一緒に洗濯物を干している雰囲気なのに、濃淡ピンク! 不思議と似合ってるけど!


≪別に染めてはおらんじゃろ。まぁ、染める連中もおるが……帝国で流行している黒や焦げ茶の薬草染料と違い、月の四色系統は髪だろうが肌だろうが、魔染料(ませんりょう)入りの定着剤を使わねばならん(ゆえ)、手入れが面倒での。おまけに、身体の周りに特有の魔素を(まと)うようになる≫


 魔染料って何。違いが解らない。


≪神殿の地下にいた連中は、全員髪も肌も脱色したように白くなかったか? 普段、魔染料を使用している身で大型魔術を成功させると、ああなるのじゃ。体内外の魔素を大量消費するからのぉ≫


 確かに毒唐傘茸(ドクカラカサタケ)みたいな、ぬぼっとした白さだった。そいでおかっぱ金髪は、やっぱり(かつら)だった。

 色々とバレちゃうなら魔染料なんて使わないほうが良くない? って指摘したら、魔染(まぞ)めはステータスだし、逆に魔術の成功不成功が目視できるから便利なんだって。自分の属性の魔染料なら体内魔素循環の保護になるし、苦手な属性なら補強材料になる。


≪じゃあ、爺様も魔染めしてたってこと? 死体は白髪の白肌になってたよね?≫


≪当たり前じゃ! ワシを誰と心得る!≫


 えー、霊山の難しい結界突破を大成功させた、『しがない学校のしがない教師』さんですけどぉ?


≪う、うむ。ごほん、そうじゃったな。で、この女の髪と肌は、体内魔素の流れが自然であるからして、染めておらん≫


 染めていると私が勝手に思い込んだ住民の青や紫色の髪も、自然な体毛として存在するらしい。……地球人とちょっと違う。


 に加えて、髪だけでなく肌まで染める人が存在するって、どうやって?


 蜜柑(みかん)の食べすぎで肌が薄っすらと黄色っぽくなった白人、ではなくて、本当に黄色い肌の人だったの? 青も赤も紫も自然の産物?


≪人間なのだから普通でしょ?≫


 カチューシャが逆に不思議がる。……ど、どうしよう。常識も習慣も、肉体の仕組みも、地球人とだいぶ違う。



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