#034「ティーン・エイジャーまで」
コユキ「明けましておめでとうございます」
アラン「明けましておめでとう」
リツコ「おめでとう。今年も、よろしく」
コユキ「よろしくお願いします」
アラン「こちらこそ、よろしく。――それでは、栗子くん」
リツコ「例の物ね。――はい、小雪ちゃん」
コユキ「お年玉ですか。ありがとうございます」
アラン「大した額ではないけどね。ほんの気持ちだけ」
リツコ「少し遅いボーナスだと思ってちょうだい」
コユキ「嬉しいんですけど、本当に頂いて良いんでしょうか? もう子供ではない気がしますけど」
アラン「未成年だから良いんだよ。――そう思うだろう?」
リツコ「えぇ。あたしたちから見れば、小雪ちゃんは、まだまだ子供よ」
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コユキ「黒豆、数の子、田作り、叩き牛蒡、紅白蒲鉾、伊達巻、栗金団、お多福豆」
リツコ「鰤の照り焼き、鯛の塩焼き、海老の姿蒸し、紅白膾、長老喜、酢蓮」
アラン「昆布巻き、陣笠椎茸、楯豆腐、手綱蒟蒻、芽出し慈姑、花蓮根、矢羽根蓮根、八ッ頭、金柑、梅花人参」
コユキ「本格的な御節料理になりましたねぇ」
リツコ「どれも亜嵐さんのご実家から送られて来たものよね」
アラン「材料だけでは飽き足らず、ご丁寧に重箱や巻き簾や抜き型まで送って来るんだからなぁ」
コユキ「臼と杵までは同封されてませんでしたね」
リツコ「さすがに、そこまではしないわよ」
アラン「イングリッシュ・ガーデンで餅つき大会するのは御免だよ」
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リツコ「お汁粉が出来たわよ」
コユキ「わぁ、美味しそう。丸餅で漉し餡なんですね」
アラン「田舎汁粉は、小豆の皮が気になるし、角餅は、熱の通りが均一にならないから、あまり好きでは無いんだ」
リツコ「あたしは、きな粉餅や善哉のほうが好きなんだけどね。――そうそう。あとでアレを持って行ってあげてね」
コユキ「はい。――お海苔で巻いて、磯辺焼きにしても美味しいですよね」
アラン「砂糖醤油や味醂でも良いし、七味や柚子胡椒でも良いね。――渡すだけで良いから。すぐに戻っておいでよ」
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ケイゴ「コレ、すべて一から作ったんだ。凄いなぁ、バイトくん」
コユキ「いえ。調理の大半は、淀川さんと栗子さんですよ。わたしは、材料を切ったり火加減を調節したりしたくらいです」
ケイゴ「いやいや。それでも手伝うだけ偉いよ。立派だね。――おや? それは何だい?」
コユキ「あぁ、これですか? 今朝、お二人から頂いたんです」
ケイゴ「お年玉か。俺も手伝いに行ってたら貰えたのかなぁ」
コユキ「常連さんは成人されてますからねぇ」
ケイゴ「やっぱり駄目か。子供は良いよなぁ」




