#028「焼くなり煮るなり茹でるなり」
コユキ「今年二回目の南瓜ですね」
リツコ「ハロウィンと違って、皮が緑で小振りだけどね」
コユキ「ハロウィンの南瓜はパイにしましたけど、これは何の料理にしましょうか?」
リツコ「そうねぇ。砂糖と醤油で煮付けようかしら」
コユキ「和風ですね」
リツコ「冬至だもの」
*
アラン「期末試験も終わったことだ。そろそろ、この部屋も掃除しないといけないと思うんだが」
コユキ「ウッ。どうしても、今日やりますか?」
アラン「綺麗な家で歳神様を迎えたいからね。それに、家、部屋、机の状態は、心理状態と深く関連しているものだ。整理整頓が行き届いていない家に住み続けると、精神が乱れてしまう」
コユキ「それは困りますね。――あの、淀川さん。中を見ても怒らないでくださいね」
*
アラン「これは酷いね。やはり、炬燵は悪魔の発明品だ。人間を堕落させてしまう」
コユキ「ごめんなさい。温もりの魔力には抗えませんでした。何度も片付けようとは思ったんですけど、つい、面倒になってしまって」
アラン「こうも集中力を削ぐ誘惑がそこかしこにある状態では、注意力散漫になって目の前の作業に没頭できないのも、無理のない話だ。まずは不用品を捨てて、必要なものを分類するところから始めようか」
コユキ「でも、淀川さん。ずっと使っていない物をで処分したら、次の日に必要になるって言いますよね? それに、物は大事にしないと」
アラン「マーフィーの法則は、科学的根拠の無い経験則だよ。それに、何もかも後生大事に保管するのは、賢明なことではない。いかに効率良く収納するかより、いかに取捨選択するかに重点を置くべきだ」
コユキ「わかりました。年貢の納め時ですね」
*
コユキ「柚子湯なら、わたしが入る前にそう言ってくださいよ、淀川さん」
アラン「済まない、宮部くん。冬至だから、当たり前だと思ってたんだ。苦手だったかい?」
コユキ「いえ。そういうことではないんです。長湯してしまったので、待ちくたびれてないかと気掛かりで」
アラン「何だ、そんなことか。ゆっくりして構わないと言ってるのに。部屋の片付けで疲れてただろうし、窓を開けたままだったから身体が冷えてただろう? 柚子には疲労回復や体温上昇、それから風邪の予防にも効果があるんだ。――クシュッ」
コユキ「やっぱり早く上がったほうが良かったですね。さぁ、さぁ」
アラン「押さないでくれよ。これはきっと、冷えではなくて埃だ」




