#025「ノンコミタル・アンサー」
リツコ「高身長・高学歴・高収入の三高から、平均的年収・平凡な外見・平穏な性格の三平を経て、低姿勢・低依存・低リスクの三低か」
ケイゴ「女性が、彼氏や結婚相手に求める条件ですね。しかし、この理想像通りだとしたら、一緒にいる必要があるとは思えないんですけどねぇ」
リツコ「美容師・バンドマン・バーテンダーの三ビーや、整体師・消防士・スポーツ・インストラクター三エスに懲りた反動じゃないかしら」
ケイゴ「ビーと係わると苦労するという刷り込みでしょうな。舞台俳優・ブロガー・不細工も敬遠されますよね」
リツコ「三ケーの仕事と同じね。きつい・汚い・危険」
ケイゴ「最近は肉体労働だけではなくて、頭脳労働でも三ケーと言われてますよ。厳しい・帰れない・給料が安い」
リツコ「どちらにしても、過労で倒れやすい仕事ね」
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コユキ「バッハ、ベートーベン、ブラームス」
アラン「ベルリン、バグダッド、ビザンティウム」
コユキ「音楽家にしても政策にしても、ドイツが関係しますね」
アラン「そうだね。偶然の一致だろうけど、興味深いね。――さて。話を戻すけど、ラグビー部の副将から告白されたとか」
コユキ「同じコースの先輩から、映画に誘われただけですよ。ペア・チケットを貰ったからって」
アラン「新聞の勧誘でも来たのだろうか? 粉洗剤と並ぶ定番だけど」
コユキ「一人暮らしですけど、そういう情に流されるタイプでは無いと思います」
アラン「ともかく、異性から一日付き合って欲しいと言われたんだろう? 立派なデートの誘いだよ」
コユキ「違いますよ。本当に、そういうんじゃないんですよ、淀川さん」
アラン「宮部くんにその気は無くても、相手がどう思ってるかは判らないよ。君の心にタッチ・ダウンとか言ってくるかもしれない」
コユキ「そんな、お寒い口説き文句を使うキャラクターではありませんよ」
アラン「万が一ということもある。もし、そういうことを平気で言うようなら、独占欲の強い束縛男だ。気をつけるように」
コユキ「心配要りませんよ。そんなことを言われた日には、たとえ百年の恋でも冷めますから」
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リツコ「方向音痴の人間は、どうして独断に自信を持って歩き続けるのかしら?」
アラン「さぁね。鮪や鰹と同じで、止まると酸欠になるのだろうか?」
リツコ「解らないわよねぇ。――カリヨンの鐘か。冬場の駅前での待ち合わせ場所として、定番のスポットね」
アラン「夏場なら、屋根があって風が通り抜ける噴水広場。冬場なら、硝子張りの天井から陽が差し込むカリヨンの鐘。間違い無い場所だが、ありきたりすぎないか?」
リツコ「面白味に欠けるわね。そのあとに仕事の打ち合わせでもするなら、問題無いんだけど」
アラン「特別感が無いね。これは脈無しかな?」
リツコ「その可能性が高いわね。でも、初回だから下心を隠してるだけとも考えられるわ」
アラン「あえて気の無い素振りを見せて、油断させようという訳か」
リツコ「疑い出したらキリがないわね」




