#020「ナショナル何とか」
リツコ「日本で産出できる数少ない鉱物の一つで、宝石言葉は知性。古来より装飾品や祭祀呪具に多く用いられ、中でも勾玉は三種の神器の一つとして有名である。――翡翠が国の石に指定されたみたいよ」
アラン「神秘に満ちた輝き、採掘のロマン。――国の象徴として選ばれる基準は何なのだろう?」
リツコ「鳥はキジ、魚は錦鯉、蝶はオオムラサキ。その国に棲息していなくとも、また想像上の生き物でも良いんだから、勝手なものね」
アラン「いい加減なものだね。白黒曖昧な動物のようだ。パンダ、獏、シマウマ、牛」
リツコ「獏は知らないけど、パンダの地肌はピンク、シマウマはグレー、牛は、そのままよ」
アラン「シマウマは、体毛を剃ってもハッキリしないんだね。――花は菊、樹は桜、菌は麹」
リツコ「麹菌は、いっとき塩麹ブームで話題になったわね」
アラン「話が飛躍するけど、食卓塩が精製された塩化ナトリウムだという常識は、どこまで通用するものなのだろう?」
リツコ「岩塩ではなく天然塩。かつ、釜焚き塩や加工塩でない天日塩か。工業技術水準と、料理に対する考えかた次第だろうけど、少なくとも東アジアでは通用するんじゃないかしら?」
アラン「ウム。そんなところだろう。僕は、ヨーロッパやアフリカ諸国での塩事情は、寡聞にして聞いたことが無くてね。塩は調味料や保存料の原点であるだけに、身近すぎて問題意識が無かったなぁ」
リツコ「肉や魚や野菜を塩漬けにして長期管理するのは、もっとも原始的な食品保存方法でしょうね」
アラン「また塩のソルトは、給料のサラリーという言葉の語源でもある。――話を少し戻すが、日本は円を通貨にしている。補助通貨としての銭もあるが、こちらは株価や外貨建て自国通貨額の値動きでしか使われてないから、この際、無視しよう」
リツコ「余談を挟んで脱線させるようだけど、銀行のエー・ティー・エムは常に長蛇の列で、おまけに自動音声が甲高く早口だから、お年寄りには優しくない思わない?」
アラン「たしかに。郵便局に年配の利用者が多いのは、そのせいもあるんだろう。近視眼的で視野狭窄。自分たちの目前の利益しか考慮しない、場当たり戦略政策。長期的には損害を被るとしても、そうなる頃には自分は責任ある立場に無いことを理由に改めないまま進めてしまい、最終的に首が回らなくなる」
リツコ「本当に最近、世の中がどうかしちゃってるわよね。少子化に伴って公立校の教員を削減しようと提案されたり、各種税金は罰則で生活保護は賞与だという考え共感を得てたり、共同体脱退が国民投票で賛成されたり、他の民族や文化に無理解で差別発言をする大統領が当選したりするのも、国民の多数が長い目で物事を考えられなくなってきてる証拠ね」
アラン「教職員の負担が増えていることや、いつまでも現役で健康体とは限らないから相互扶助が必要なことや、自分の投じた一票に対する責任について、もっと真剣に考えなければならない」
リツコ「平和ボケしてしまって、戦争の恐怖が風化してしまってるのね」
アラン「軍国主義が復活しなければ良いんだけどねぇ」
リツコ「君が代斉唱、全員、起立。日の丸掲揚、掲揚柱に注目。平成に入って、日の丸が国旗に、君が代が国歌が正式制定されたのも、意味深な話ね」
アラン「激動の昭和が、急速に忘れ去られてしまったものだね」
リツコ「そうねぇ。――さて。天下国家論は、これくらいにしとかないと」
アラン「そうだね。もうすぐ、平成生まれの二人が姿を見せるだろうからね」




