#011「烏滸がましさ」
リツコ「あれから、今年で十年。亜嵐さんは、あたしとの約束を覚えているのかしら?」
*
ケイゴ「名古屋が降格か」
コユキ「サッカーの記事ですね。気になりますか、常連さん?」
ケイゴ「中学・高校時代は、サッカー部だったからね。ボールは友達さ」
コユキ「友達を足蹴にして良いんですか?」
ケイゴ「そういうスポーツなんだから良いんだよ、バイトくん。それに、小脇に抱える訳にいかないだろう?」
コユキ「それだと、ラグビーになってしまいますね」
ケイゴ「そうだろう。何にせよ、俺にとってサッカーは、青春の一頁なんだ」
コユキ「充実した学校生活を送ってたんですね」
ケイゴ「それなりだよ。ところで、バイトくんの初恋は、いつだ?」
コユキ「何ですか、急に」
ケイゴ「今の俺の話とも関係するんだ。セク・ハラだと思わずに答えてくれよ」
コユキ「その発言がセク・ハラな気がしますけど、まぁ良いでしょう。小学五年の秋に、転入生の男の子に一目惚れしたんです。半年足らずで転校してしまったので、手も握れないままでした」
ケイゴ「甘酸っぱいねぇ。バイトくんも、ちゃんと青春してるじゃないか」
コユキ「十人並みですよ。この話が、さっきの常連さんの話と、どう繋がるんですか?」
ケイゴ「俺の初恋は中学二年の春で、相手は一学年下の女子マネージャーだったんだ。忙しい練習や試合の合間を縫って、二人で手を繋いで遊園地や映画館でデートしてさぁ」
コユキ「それから、どうなったんですか?」
ケイゴ「俺が三年の夏に引退して受験勉強で忙しくなってから、段々と疎遠になって自然消滅したよ。どこか苦味や痛みを伴うものだったなぁ」
コユキ「やっぱり、初恋は叶わないものなんでしょうか?」
ケイゴ「そのほうが、お互いのためだって言うけど、どうなんだろうなぁ」
コユキ「純粋な気持ちは、いずれ変わってしまうものだから、とも言いますよね」
ケイゴ「例外も存在するけどな。それも、俺たちのすごく身近に」
コユキ「えっ。誰ですか?」
ケイゴ「ちょっと、耳を貸してごらん」
――ケイゴ、コユキに耳打ち。
コユキ「えっ! あの二人、そんな約束をしてるんですか? それとも、いつもの冗談なんですか?」
ケイゴ「いやいや。この話は本当だよ」
コユキ「ただならぬ間柄だとは思ってましたけど、まさか」
ケイゴ「事実は、小説より奇なり。動きがあるとすれば、これから二ヶ月足らずのあいだだと思うんだ」
コユキ「それとなく応援したいところですね」
ケイゴ「少なくとも、差し出がましいことをして、邪魔立てしないようにしないといけないな」
*
アラン「十年経っても、お互いの気持ちが変わらなかったら、そのときは結婚しよう。あの聖夜の約束から、今年で十年。もっと長いものだと思っていたが、月日が経つのは早いものだ。阿笠くんは、どう思っているのだろう?」




