#000「一日を丁寧大切に」
アラン「あぁ、キレイな朝焼けだ。ハーブたちも喜んでる。……今日は果たして、どんな一日になるだろうなぁ」
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コユキ「ヒャッ」
リツコ「どうしたの、小雪ちゃん。あらあら。怪我は無い?」
アラン「どうしたんだい? あぁ、カップが」
コユキ「ごめんなさい、淀川さん」
リツコ「待って、小雪ちゃん。触っちゃ駄目。あたしが塵取りと箒を持ってくるから」
アラン「頼んだよ、阿笠くん。――指を切ったりしてないかい、宮部くん?」
コユキ「大丈夫です。あの、淀川さん」
アラン「謝る必要は無い。故意に割った訳では無いのは、一目瞭然だからね」
コユキ「でも、お店に迷惑を掛けてしまって申し訳ないです」
リツコ「誰だって失敗するものよ。そうして、だんだんと学んで成長していくの」
アラン「そう。それにカップなら、また買い直せば良い。――お客さんだ」
リツコ「ここの後片付けは、あたしに任せて」
コユキ「あっ、はい。お願いします。――いらっしゃいませ」
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ケイゴ「お邪魔しまぁす」
アラン「邪魔するなら帰れ」
ケイゴ「それじゃあ、お暇して。いやいや。常連を追い返さないでくださいよ、マスター」
アラン「仕事は、どうした?」
ケイゴ「息抜きですよ。リフレッシュ・タイム」
アラン「まったく。学生時代から変わらないな、西野くんは」
リツコ「亜嵐さん。お頼まれの物、買って来ました。――あら、桂梧くん」
ケイゴ「こんちは、マドンナさん」
リツコ「桂梧くん。この前、また小雪ちゃんに出任せを吹き込んだでしょう?」
ケイゴ「バイトくんに? そんなこと、あったかなぁ?」
リツコ「とぼけないの。あの子は他人を信じやすいんだから、からかわないであげてちょうだい」
アラン「僕からも、お願いするよ。――はい、いつもの」
ケイゴ「へいへい。二人して、そんな般若みたいな顔しないでくださいな。――いただきます」
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アラン「ただいま」
コユキ「お帰りなさいませ。あら? 手ぶらなんですね」
アラン「あぁ。どれも、いまひとつだったんでね」
コユキ「お眼鏡に適うカップが無かったんですか。すみません」
アラン「宮部くんは、何も悪くない。僕は余計な装飾の無い、白い陶器が好みなのだが、どうも今は、そういう物は流行と違うらしい。まぁ、気長に探すさ」
コユキ「明日は見つかると良いですね」
アラン「あぁ、そうだね」
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アラン「朝に失った悲しみが、夕方には消えてるくらいのモノが、その人にとって身分相応であるというが、その通りだな。……明日も、いい一日になれば良いけどなぁ」