第3話 決着セバスチャン
あーもー何かこの世に生まれてきてごめんなさい、スキル失敗したなぁ。
「「「「可決!」」」」
「否決ってあれ?」
そーそー、4対1で可決なのね。
……可決。ん?可決って言ったよね?どうなっちゃうのこれ?
(可決により対セバスチャン用能力強化付与)
頭の中に自動音声オペレーターのような女性の声が頭の中に直接語りかけてくると、俺の身体は黄金色に輝いた。その輝きにセバスチャンや城内の野次馬達も思わず声を上げた。
「まさか?その光は、ゆう……いや!そんなはずはありません!」
セバスチャンが何か言おうとしたが、言葉を飲み込み先手必勝と言わんばかりに、突進し拳を俺に向けて繰り出してくる。しかし、その拳が届くより先に俺のスキル付与が完了するのが早かった。俺は繰り出された拳を片手で受け止めると、そのまま拳を自分の方へと引き、セバスチャンが目の前まで来るともう片方の手でセバスチャンに腹パンを決める。
腹パンをもろに喰らったセバスチャンは、そのまま意識を失い地面へと倒れ込んだ。静まり返る城内の中、黄金色は光を失い元の力ない俺へと戻った。そして、俺はリリアの方へ向き声をかける。
「おーい、これは勝ったって事でいいのかな?」
リリアは涙を堪えながら、何度も頷いていた。うーん、そんなに俺が勝ったのが気に入らないのだろうか?あの子、今にも泣きそうなんですけど。勝利したと言う安心感からか一気に身体から脱力感が沸き、立っていられない俺はそのまま崩れるように座り込んでしまった。
それを見ていたリリアは急いで兵達に指示をする。
「皆の者、あの2人をすぐに治療室へと運んでください」
兵達は敬礼をすると、すぐさまタンカが用意され俺とセバスチャンは治療室へとタンカに乗せられ運ばれた。セバスチャンは意識を失っているため、ベッドへ寝かされたが俺は意識があるので椅子に座って、治療を受ける事になった。
「どれ、見せてみなさい?あらっあちこち怪我してるじゃない」
俺の状態を見てくれている人は、白衣の下からは胸元がしっかりと確認できる服を着た、金髪のお姉さんであった。俺はその胸の谷間に釘付けで、お姉さんには申し訳ないと思いつつも適当な相槌しか返せないでいた。
「んーもう、話聞いてる?痛いところは?」
「聞いてます、聞いてますとも」
「私の胸ばっかり見てない?」
「見てます、しっかりと見てます……はっ!見てません」
「嘘おっしゃい、ずっと視線の先が変わらなかったんだけど?」
俺は気まずくなって視線を逸らすと、お姉さんは呆れた口調で話を続けた。
「まぁいいわ。それよりもあなたセバスチャンと闘って怪我一つないなんて相当強いのね。一応診たからね。戻っても大丈夫よ」
「ありがとうございました」
俺は殴られた箇所が痣にすらなっていない事に疑問を抱いたが、それよりもここから立ち去りたい気持ちの方が強くそれ以上は気にしない事にした。
治療室から出て、人気のない庭の椅子に腰掛けると俺は再びジャッジメント・スキルを発動する事にした。
(俺にスキルの説明をしてくれ。ジャッジメントスキル・発動)
すると黒い小人だけが現れた。あれ?他のは?
「やぁ、スキル説明はきちんとするようになっているから今回は僕だけが出てきたよ」
「あぁそうか、一番やる気がないのがでてきたな」
「やる気がないとは失礼な、君のスキルはそれだけ危険だと言うことだ。ちなみにだがこの世界を滅ぼす力が欲しいと願い、僕達が可決すると君はこの世界を滅ぼせる力を手に入れてしまうんだ」
「はぁ、じゃあさっきの却下した理由は?黒いの君だけだよ、却下したの」
「オタオタする君の姿が面白かったからに決まってるじゃないか(本当にピンチになった時だけ力が与えられるようなるべくギリギリまで避けたかった)」
黒い小人はびしっと指を俺に突き立てる。しかし、本音と建前が逆になっている小人に対して俺は肩を震わせる。こいつ、あほだろ。
「おい、本音と建前が逆になってるぞ」
「しまったぁ!今度から気をつけようっと。それよりも説明が必要なんだったよね?まずはスキルの説明を僕がある程度するから質問は後で受け付けるよ。」
俺はそれでいいと小さく頷いた。
「オッケ、じゃあまずジャッジメント・スキルのストックは最大3つで1つ発動した際の再ストックは8時間で1個だよ。だから3個使った場合は1日休まないとマックスには戻らないって事。現在のストック数は君の目には見えないから感覚でなれるしかないね。後この説明もスキル発動扱いになるから、今日1日はこれ以上使えないよ。何か質問はある?」
「なるほど、3回立て続けに使うと次に使えるのは8時間後で1個だけ回復し2個目は16時間後になるって事か。むやみに連発はできないんだな。可決、否決のポイントって何?3回連続否決されるとスキルの意味がないから教えてくれ」
黒い小人は腕を組みながら、目を閉じて悩み始めた。俺、そんなに悩む質問したっけ?
「そうだなぁ、君のピンチ時に救いのお願いは可決になるよ。君の死は僕等の死だからね。だから、ギャンブル運をあげてといっても、これは否決になるよ。借金では君の命に危険はないからね。これで答えになっているかな?」
俺のピンチを基準にすればいいって事か。何となくわかった。
「じゃあさ、俺の基礎能力を上げたいってのも駄目?」
「駄目だね、身体能力低くても問題ないでしょ?ちなみに君は異世界スキル持ちだから身体能力上げるのかなり厳しいよ」
確かに、訓練は地道にやるしかないのか。ってかさらりと聞きたくない大事な情報話したぞこいつ。
「ふーもういいかな。僕は戻るよ。この姿で出るのも何気にエネルギー使うんだよね。なるべく美味しい物食べてね。君の栄養は僕等の栄養になるから」
「分かった、ちなみに美味しい物を出すお願いは聞いてもらえるの?」
「うん、それは可決だね。僕らも美味しい物食べたいし、じゃーねー」
黒い小人はそう言うと白い煙を残して姿を消した。うん、いくつか課題が出来たが今日は疲れた。俺は疲労が一気に出たのか、椅子へ横になるとそのまま眠ってしまった。